2011 Fiscal Year Research-status Report
eラーニングにおける組織的学習支援のモデル化とシステム開発
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23501112
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 裕 青山学院大学, 情報科学研究センター, 助教 (10316888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 浩一郎 慶應義塾大学, 理工学部, 研究員 (00468547)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学習支援 / eラーニング / eメンタ / 組織的学習支援 / SECIモデル |
Research Abstract |
本研究は、学習支援活動の平準化、eメンタ1人あたりの負荷軽減のために、組織的学習支援活動のモデル化と支援システムを開発、評価することを目的としている。モデル化およびシステム開発をするためには、1、eメンタが実際に活動した際のログをSECIモデルの観点からの分析、2、eメンタに対するヒアリングによるSECIモデルの各フェーズの展開状況の調査、3、これらの調査結果からの従来の学習支援方法によるSECIモデルとのマッチング、4、1から3の結果を踏まえた、SECIモデル表出化・結合化フェーズの支援システムの要件定義に関する研究が必要となる。これら各研究分野において平成23年度は次のような成果を残した。第一の成果として、これまでのeメンタの活動(社会人に対する学習支援のログを分析)をSECIモデルの観点から分析を行った結果、従来の学習支援方法では、SECIモデルの共同化フェーズに相当する活動は見られたが、表出化以降の活動はごく一部しか見られず、結合化・内面化フェーズについては、全く見られないことが分かった。第二の成果として、eメンタへのヒアリングの結果でも、学習支援のログとほぼ同じ結果となった、ただし、表出化フェーズは、学習支援ログでは残らない部分で、その特徴がみられる活動も存在した。第一および第二の結果については、齋藤ほか(2011)で発表を行った。第三の成果として、eメンタの学習支援活動の表出化・結合化フェーズの検討および支援システムの要件定義を試みた結果、他のフェーズとの関連性が強く、単独で2フェーズの支援システムの要件を詳細に検討することが難しいことが分かった。平成24年度はこれらの結果を踏まえ、SECIモデルの4つのフェーズに従い、組織的学習支援のモデル化およびその支援システムの要件定義・設計・開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究計画で予定されていた研究項目は1)eメンタの学習支援活動とSECIモデルとの対応、2)eメンタの学習支援活動の表出化・結合化フェーズの検討および支援システムの要件定義・設計・開発である。平成23年度の研究項目のうち、1)については、従来の学習支援方法によって行われたeメンタの学習支援活動について、学習支援ログとヒアリングからSECIモデルとの対応を行った。結果、共同化、表出化フェーズへの対応は見られたが、残りの2フェーズに該当する活動はほとんどなかった。この点を踏まえ2)の研究活動を取り組んだ。計画では、表出化フェーズ、結合化フェーズの支援システムの設計・開発まで行う予定であったが、研究を遂行するに従い、平成24年度に行う予定であったSECIモデルにおける共同化フェーズにて発生する情報を利用することを前提とした支援システムの要件が多数存在することが明らかになった。そのため平成23年度の研究遂行を行う上で、当初予定されていた計画内容と共に共同化フェーズのモデル化および要件定義を併せて行う必要が発生した。そこで、平成24年度に行う予定であった共同化フェーズのモデル化および要件定義の一部先行して研究活動をスタートさせたため、共同化・表出化フェーズの設計・開発までには至らなかったが、期間全体からみるに、おおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
従来の研究計画では、平成24年度は1)eメンタの学習支援活動の表出化・結合化フェーズの支援システムの評価、2)eメンタの学習支援活動の内面化・共同化フェーズの検討および支援システムの要件定義・設計・開発であった。平成23年度に研究を遂行した結果、前述した平成24年度の研究計画について、一部先行(SECIモデルにおける共同化フェーズに相当する部分の組織的学習支援のモデル化と支援システムの要件定義・設計・開発の一部を先行)して研究を開始した。そこで、平成24年度は、eメンタの学習支援活動のSECIモデル全体(表出化フェーズ・結合化フェーズ・内面化フェーズ・共同化フェーズ)のモデル化および支援システムの設計・開発を一体化して行い、そのうえで、開発した支援システムのうち、表出化フェーズおよび結合化フェーズの活動に対する支援を行う機能の評価を行う。評価を行うに当たっては、eメンタを被験者とした実証実験(eメンタが組織的な学習支援を行う実験)を行う予定である。また、これらの研究成果について、国内外の学会等において、研究発表を行う予定である。さらに、国内外の学会等へ出席することによって、最新のeラーニングおける学習支援の動向に関する調査を行い、これらの結果をモデル化や支援システムの設計・開発に反映させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、研究期間全体にわたり、教育工学、情報工学、教育心理学、コミュニケーション学、プロジェクトマネジメント(PM)、ナレッジマネジメント(KM)とさまざまな視点から調査を行い、開発を経て、分析を実施し、研究成果を出していく。平成24年度の研究費の使用計画は下記の通りである。1)平成23年度の研究成果を踏まえ、平成24年度は組織的学習支援のための支援システムの開発を行う。具体的には、データベースの構築、組織的な学習支援活動のモデルそのものを支援する機能(学習支援活動をすべて可視化する機能や共有する機能など)の開発を行う。開発の一部が専門企業に開発を依頼するため、費目「その他」での支出を予定ている。2)支援システム開発のため必要なソフトウェア、支援システムを搭載するためのサーバー製品、ならびに各ソフトウェア・ハードウェアのメンテナンス製品が必要となる。これらについて物品費での支出を予定している。3)支援システムの一部機能の評価を行うため、2名のe メンタが被験者となる実証実験を少なくとも1回実施する。そのため、データ量が膨大となり、収集した学習ログデータ、e メンタのアクセスログ、活動ログ等のデータ分析の補助を実施する研究補助要員が必要となる。それら作業のための謝金が発生する。これらについて人件費・謝金での支出を予定している。また、研究成果の論文・国内学会発表ならびに研究遂行のための打ち合わせ等も度々行われるため、会議費や研究発表に関係する旅費なども必要となる。なお、次年度使用額(1,034,740円)が生じたのは、前年度に予定していた支援システムの機能開発の多くは、当初計画で本年度開発予定であった機能と合わせて開発する必要が発生したため本使用額が生じている。そのため使用額の多くは機能開発のための費用となる。
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