2011 Fiscal Year Research-status Report
直観的なメディア特性に基づいた情報教育のための教材に関する研究
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23501134
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
内木 哲也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70223550)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 教育工学 / 実験学習教材 / コンピュータ・リテラシー / 科学教育 / 情報教育 / 情報メディア / 教育情報システム |
Research Abstract |
本研究では、現代の教養であるコンピュータの基本原理が直観的に把握できると共に、自ら設計した論理回路を実地に組み上げ動作検証することで主体的に学習できる教材の開発を目的としている。動作を視認できない電子工学的な機構を実験教具により学習者に主体的に認知させる取り組みは、これまでコンピュータ画面上でのシミュレータとして数多く開発されてきたが、それらはテレビゲーム感覚で学べる反面で却って実体感を損なってしまうため、敢えて光や音、物体の運動等の物理的な動作機構として実現するものである。 昨年度は実地に用いる実験教材に必要とされる具体的な演算ブロックの種類と機能とを探るための半導体素子を用いた演算ブロックの製作とリレー式演算ブロックのプロトタイプの設計に重点的に取り組んだ。具体的には、研究の細目的テーマの中で申請者が開発した電子式演算ブロックによる実地検証に向けて制作すべきブロックの機能要件の抽出し、研究協力者との議論を通して、必要とされるブロックを再設計した。現在、この設計に従った電子式論理演算ブロックを用いた予備実験に向けて、ブロックを製作中である。もう一つの研究の細目的テーマであるリレー式論理演算ブロックについては、その電気的特性や動作限界などを探る必要があるため、いくつかのプロトタイプを設計し、現在動作テストに取り組んでいる。 昨年までに得られた重要な見解は、電子式ブロックを用いた予備実験を通して実験教材を用いた主体的な学習では単なる知識習得以上の理解の深化が感触として得られたことである。それと同時に、実験に必要な演算ブロックの種類や機能も次第に限定されつつある。現在試験中のメカニカルな演算ブロックによる実験との比較を通して、教育効果を高めるための教材の用い方やメディア表現のあり方についての議論が深まることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、研究の細目的テーマである電子式論理演算ブロックの実験用教材としての実地検証と、同じく細目的テーマであるリレー式論理演算ブロックの設計に向けたプロトタイプによる試験調査することを予定していた。前者については、NANDやXORを含む各種論理ゲートによる演算ブロックを製作して予備実験を実施すると共に、実験を通して教材に求められる機能や、学習者に論理回路の実験を行わせる方法についての知見を得ることができた。 後者については、以前製作したリレー式全加算器での知見に基づいたプロトタイプを製作し、現在動作の検証試験を繰り返している。リレー式の場合、教材としての自由度と相反して確実な動作に向けた動作タイミングの調整と共に、駆動電源の容量確保と電流量調整のための手立てが必要なためであるが、多用な利用状況を想定した動作試験で得られたデータに基づき現場での使用に耐える設計に取り組んでいる状況である。以上のように、研究目標の達成度は現在までのところおおむね当初計画通りに順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、概念的に表現されてきた目に見えない電子演算機構を、光や音、物質的動作などの直観的メディアを用いて表現することに焦点を当て、基本概念の理解と共に実験による理解の深化を目指した教材を開発することを目的としている。そのための具体的な方策として、電子演算機構の動作をリレースイッチの動作として直観的に把握させると共に、学習者の設計に従って論理回路を組み上げてその動作を実地に検証できる教材として、大型のリレーのような電気機械的機構による論理演算ブロックを開発すべく研究を推進してきたわけである。 これまでの電子的論理演算ブロックを用いた予備実験からは、実験教材が当該の学習効果を深化させている感触を得ており、リレー式論理演算ブロックのような物理的に駆動する演算機構を持った実験教材との比較実験への期待が高まっている。比較実験によって、物理的動作機構が学習理解に及ぼす効果と実体感との関係がより明確になるものと考えられるからである。 以上の研究経過および状況を鑑み、今後の研究は当初の研究計画に沿って推進すべきと考えられる。具体的には、最終的に設計する電気機械的機構による論理演算ブロックの電気的特性や動作限界、学習効果を高めるために表現すべき情報のメディア特性などを探るため、当初の予定通り実験教材のプロトタイプとしてリレーを用いた論理演算ブロックを試作し、このプロトタイプと昨年度に製作した電子的論理演算ブロックとの比較実験を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究の細分的テーマの1つであるリレー式論理演算ブロックの試作とそれを用いた実地調査に重点的に取り組む。特に、電子式論理演算ブロックとリレー式論理演算ブロックの双方を用いた実験調査を通して、最終目的とする教材の開発に向けた具体的問題点の洗い出しとその解決方策について検討し議論する予定である。 当該年度の経費としては、プロトタイプ製作のための電子部品費用と教材設計のための電子部品費用、そして教材のレビューのための実験支援機材の増設費用、機材組立のためのアルバイト費用、実験映像の記録用メディア費用、旅費関連費用(国内および米国での学会参加)に充当することを計画している。 また、最終的に開発する教材の電気機械的機構は、単にスイッチ機能ばかりでなく、スイッチ動作に従って変化する回路の結線状況を明示化できることが望ましい。そこで、次年度はこの試作に向けてアクティブな結線とその状態を可視化する手立てについても実験を重ね検討する予定であり、電子部品費用および機材組立のためのアルバイト費用としても経費を充当することを計画している。
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