2012 Fiscal Year Research-status Report
直観的なメディア特性に基づいた情報教育のための教材に関する研究
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23501134
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
内木 哲也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70223550)
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Keywords | 科学教育 / 実験教材開発 / コンピュータ・リテラシー / 教育工学 / 情報教育 / 情報メディア / 教育情報システム |
Research Abstract |
本研究では、現代の教養であるコンピュータの基本原理が直観的に把握できると共に、自ら設計した論理回路を実地に組み上げ動作検証することで主体的に学習できる教材の開発を目的としている。動作を直接感知できない電子的機構を学習者に主体的に認知させる教材は、主にコンピュータ画面上のシミュレータとして開発されてきたが、却って実体感を損なうこととなるため、実体感を伴いつつ直観的に動作を把握できる物理的な動作機構として実現する。 昨年度は電子式論理演算ブロックとリレー式論理演算ブロックとを用いた予備実験を通して、実験教材の最終設計に向けての要件を探り出すことと共に、論理演算的動作をより直観的に把握できる論理演算ブロックの設計に重点的に取り組んだ。具体的には、一昨年度に設計した電子式およびリレー式による論理演算ブロックを実装して、申請者が担当する演習授業で学生の協力の下でそのブロックを用いた予備実験を実施し、論理演算的動作を直観的に把握させるための物理的な動作の表現方法について実地に検討した。この知見を踏まえて研究協力者と共に検討を重ね、最終的な実験教材に望まれる要件に適合するリレー式論理演算ブロックを設計した。現在、この設計に従ったリレー式論理演算ブロックを試作中である。 これまでに得られた重要な知見は、動作状況を示す視覚的メディアに求められるのは、回路の結線状態を直接的に示すことよりも各論理ブロックの入出力点での論理値の明示性にあることである。そして、回路の作動については視覚的メディアによる切り換え動作表現よりもリレーの作動音のような音響的メディアの方が実感を得られるということである。これらの知見を踏まえて、当初検討していたメカニカルな論理ブロックを再検討し、最終的な実験教材としては実現性および実用性の点から論理状態をLEDで明示するリレー式論理演算ブロックが望ましいとの見解を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、研究の細目的テーマであるリレー式論理演算ブロックの試作とプロトタイプによる試験調査を重点的に実施することを予定していた。特にリレー式論理演算ブロックについては、教材としての自由度と相反する確実な動作に向けたタイミングの調整と、駆動電源の容量確保のための手立てが必要とされる。そこで、一昨年度に製作したプロトタイプでの動作の検証試験を繰り返してきたわけであるが、結果として多様な利用状況を想定した動作試験で得られたデータに基づき現場での使用に耐えるリレー式論理演算ブロックを設計できた。また、回路的には複雑化するものの、ラッチ型リレーを用いることで、電子式には及ばないものの電源容量問題も程度クリアできる見通しを得られた。 なお、当初は、最終的な教材としてリレーを大型化して視覚的に動作を把握できるメカニカルな論理演算機構の設計を予定していたが、これまでの研究成果を通して単なるリレーの大型化は視覚的メディアとしての意義はなく、むしろメカニカルな音響効果こそが重要であるとの見解を得たため、通常のメカニカルなリレー素子を中心とした論理演算ブロックを最終的な実験教材として設計するに至った。 以上のように、研究目標の達成度は現在までのところおおむね当初計画通りに順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、概念的に表現されてきた目に見えない電子演算機構を、光や音、物質的動作などの直観的メディアを用いて表現することに焦点を当て、基本概念の理解だけでなく実験による理解の深化を目指した教材を開発することを目的としている。その具体的な方策として、電子演算機構の動作をリレースイッチの動作として直観的に把握させると共に、学習者の意図する論理回路の動作を実験的に検証できる教材として、大型のリレーのような電気機械的機構による論理演算ブロックを開発すべく研究を推進してきたわけである。 これまでの電子式論理演算ブロックを用いた予備実験、およびリレー式論理演算ブロックを用いた比較実験を通して、最終的に設計すべき論理演算ブロックへの要求事項に対して以下のような対応策が有効であることが明らかになった。 ①動作を実感するために、電子素子ではなく作動音を伴う電気機械的機構が有効であり、②動作の連係は大型リレー回路を視覚的に追跡よりも入出力点での論理値の視認が効果的で、③学習者の自由な接続ニーズに対する駆動電力問題にはラッチ型リレーである程度対処可能である。 以上の研究経過および状況を鑑み、今後の研究は当初の研究計画に沿って、最終的な研究成果である電気機械的機構による論理演算ブロックを設計し、それに基づいた教材を試作すべきであるといえる。但し、最終的に設計する電気機械的機構は、研究当初に想定していたような動作を視認できる大型リレー回路によるものではなく、通常の大きさのメカニカルリレーを用いる一方、リレー回路の状態をLEDで視覚的に視認できる表示機構を備えたものとなる。なお、その試作に於いては、ラッチ型リレーを採用することによる接続の自由度と動作の安定性についての実験的検証が不可欠であるため、併せて実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、最終的な研究成果である電気機械的機構による論理演算ブロックを完成すべく、その設計と試作に重点的に取り組む。特に、ラッチ型リレーを用いた論理演算ブロックの実地の動作特性については、実地の動作解析と検証が不可欠であるため、試作と実験を繰り返して最終目的とする教材の開発に向けた具体的問題点の洗い出しとその解決方策について検討し議論する予定である。 当該年度の経費としては、プロトタイプ製作のための電子部品費用と教材設計のための電子部品費用、そして教材のレビューのための実験支援機材の増設費用、機材組立のためのアルバイト費用、実験映像の記録用メディア費用、これまでの研究成果を国内外で発表する学会参加のための旅費関連費用に充当することを計画している。
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