2011 Fiscal Year Research-status Report
脳の活性化から見る英語Computer-Basedテスト画面背景色の効果
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23501171
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 敦子 (慶祐 敦子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10337678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江藤 香 日本工業大学, 工学部, 助教 (70213551)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Web-Based Test / 画面背景色 / 光トポグラフィ / 言語脳機能 / テストパフォーマンス / 英文法 |
Research Abstract |
平成23年度では,コンピュータを用いたWeb-Based Test(WBT) の英語文法問題の背景色を変え,受験者の得点が背景色で異なるのかを調べ,解答している間の脳の働きを光トポグラフィで測定した.特に,言語処理中枢といわれるブローカ野におけるヘモグロビン(Hb)濃度変化を計測した.この実験では,先行研究で平均点が高かった青色背景とCBTやWBTに頻繁に用いられている白色背景のみを対象として,背景色の違いによって脳内の言語領域の活性に違いがあるかを探った.被験者に解かせたWBT問題はTOEICテストの英文完結文法問題を模して作成されたもので,全て4択で答えるものである.文法問題は15問で,解答方法はプルダウンメニューで4択番号の中からマウスを用いて解答1つを選択した後,「解答」ボタンをクリックすると次の問題が提示される形式である.問題の文字色は黒である.英語問題3題の後に,言語処理タスクではない画面上の丸の数を数えて4択から答えを選ぶというレストタスクを挿入した.被験者が英文法問題とレストタスクを行っている間,脳内のHb濃度変化を観測した.被験者は19才から26才の大学学部生と大学院生13人で,全て男性で右利きである.この実験では,被験者の英文法問題の正答率は青色背景のほうが白色背景の場合より高く(青=57.95%,白=46.67%),またレストタスクの正答率も青色背景のほうが高かった(青=95.38%,白=80.77%).光トポグラフィから得られた2次元画像では,いずれの背景色においてもブローカ野付近で高いHb濃度昇が見られた.しかし,白色背景で問題を解いた場合のほうが,視覚に関連するブロードマン8野付近を含む広い領域でHb濃度が高くなる傾向を観測した.この結果は,青色背景で英語問題を解いた場合のほうが,視覚などへの負荷が少なく,より問題に集中できる可能性を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度では,青色背景と白背景のみを対象として黒文字で出される英語WBT問題での背景色の効果を光トポグラフィ観測から検証した.当初は,検証する背景色は青系と白のほかに,赤,黄,緑,うす青,ピンク,うす黄,うす緑を予定していたが,脳計測は個人差が大きく,分析精度を上げるためには1色あたりの被験者数を増やす必要があるため,研究代表者が行った先行研究で平均点が高かった青色系背景とWBTで頻繁に用いられる白背景のみを対象とした.うす青背景での実験も予定していたが,23年度中には行うことができなかった.これは,東日本大震災の影響により,実験実施場所である芝浦工業大学での光トポグラフィ装置の本稼働と実験場所の整備が遅れ,それに伴い研究開始が遅れたためである.うす青背景の実験用のWBT英語文法問題は,23年度に作成済みである.また,24年度に予定しているリスニング力を測る背景色が異なるWBTでの実験のため,23年度の実験結果を踏まえて英語リスニングのWBTを当該年度に作成する予定であったが,うす青背景色の結果が23年度に得られなかったため,リスニングのWBT問題の作成を24年度に行うこととした.23年度の研究では,英語文法のWBTの得点が背景色で異なるかの検証と受験者の脳機能の光トポグラフィ測定ができ,一定の結果が得られた.この結果は,研究代表者らの先行研究結果が背景色による視覚野への負担の違いに起因している可能性を示唆した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度では,23年度と同様の手順でうす青背景の英語文法WBTを用いて白背景との差を検証する.次に英語のリスニング力を測る背景色が異なるWBTを作成し実験を行う.リスニング問題はTOEICテストの会話問題に類似し,レベルも同程度のものを用いる.答えは3択からプルダウンメニューで解答するものとする.被験者に背景色が異なるリスニングWBTを受験させ,被験者の脳血流量変化を23年度の実験と同じ光トポグラフィで計測する.WBTから得られたスコア結果を分析し,背景色で点数に違いがあるかを検証,さらに血流量変化が脳のどの部位で起こるのか,最も活性化されるのはどの部位なのかを背景色によって分析する.リスニングWBTでの実験では,背景色の違いが聴覚野活性に関与するのかについても観察をする.酒井(2010)によれば,言語の音韻と文法を処理する脳の部分は離れている.そこで,23年度に文法問題WBTで行った結果とリスニングWBT実験での結果比較を行い,背景色の影響は英語の問題の種類によって異なるのかについて検証する.結果はKES,情報処理学会などで発表する.平成25年度では,22・23年度の実験結果の更なる分析を行い,それに基づいて実験結果の追試実験を行う.酒井 (2010) によれば,言語の音声,語彙,文法,文章理解を処理する脳の部位は異なり,文法と単語処理の場所は離れている.文法問題もリスニング問題も,語彙と文章理解力が関与していることから,光トポグラフィで得られた被験者の脳活性パターンを,文法,音韻,語彙の処理を行う脳の部位との関連から検証する.多くのWBTや英語のe-learning教材で用いられている黒文字,白背景が良い色の組み合わせなのかについて結論を得たいと考えている.結果は上述のいずれかの学会で発表する.参考文献: 酒井邦嘉: 脳の言語地図, 明治書院, 2010
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していた,うす青背景での実験を24年度実施に延期したため,この実験への参加被験者と実験補助者への謝金を,23年度予定した謝金予算の繰り越しから充当する.また,白と青系の背景色から得られたデータを分析するためのソフトを購入する予定であったが,うす青背景からのデータが得られていないので,この予算についても24年度に支出する.また,23年度の研究結果発表が年度末に近かったため研究代表者の所属機関内での会計処理の都合から,発表した学会研究会の旅費を本研究予算からは支出しなかった.この旅費支出にあたる予算を,本年度は研究打ち合わせのための旅費および人工知能学会全国大会参加旅費に充てる予定である.23年度では実験用の英語文法問題WBTを作成するための費用を支出する予定であったが,先行研究で用いた英語文法WBTの問題からの変更のみであったため,作成費用がかからなかった.この費用の一部を,24年度のリスニング問題作成と音声タイミングを測るための機材とそれに必要なソフトの作成に充てる予定にしている.23年度の研究で,データ分析用にWindows7搭載のノートパソコンの購入を予定していたが,日立の光トポグラフィ用のソフトがWindows7に対応しているかの確認が23年度では取れず,分析にWindows XP搭載のノートパソコンを使用した.Windows7上でも光トポグラフィ用のソフトが問題なく使用できることが確認できたため,23年度に予定していたノートパソコン購入費用を24年度の購入予算へ充当する.
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Research Products
(3 results)