2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501205
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田口 直樹 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (60303252)
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Keywords | 基盤技術 / 技術形成 / 国際分業 / 伸線 / 金型 / 中国 / 台湾 |
Research Abstract |
本件研究はアジアにおける基盤技術の形成に関する国際比較を目的としたものである。本年度は、海外については台湾と中国の基盤産業について実態調査を行った。台湾については基盤産業である伸線業を対象として台南地域における伸線業の技術形成過程を分析対象として調査を行った。伸線業は日本においては斜陽産業化しており、その多くがアジア地域で生産されるようになっている。そこで、その実態を知るべく台湾の伸線業を調査したわけであるが、台湾の伸産業は現在においても成長産業であることが明らかになった。日本と比較してても大規模事業者が多く、標準品においては非常に競争力を持つ存在としてアジアに位置していることが分かった。但し、高付加価値品については、やはり日本の伸線業の方がまだ競争力を有しており、明らかにセグメント別に国の競争優位の違いがあることが想定されることが明らかになった。 中国については、基盤産業である金型産業を対象として調査を行った。中国の金型産業については著しい技術発展を遂げており、ローカル金型メーカーに関しても日本の金型技術と遜色のないものを生産できるレベルに到達していることが明らかになった。この背景には積極的な設備投資と外資系ユーザーの積極的なローカル金型メーカーとの取引により技術レベルが上がってきていることによる。しかし、一方で中国においても人件費の高騰や材料価格の高騰も著しく、中国金型産業も従来のように安くできるのが当たり前というような市場状況ではなくなってきていることも事実として浮かんできている。故に、中国のローカル金型メーカーも工程管理技術などのトータルな技術管理を上げていく必要に迫られている。 台湾・中国の基盤産業の実態の分析から技術先進国である日本のモノづくり技術の課題およびこれらの国との国際分業の在り方について仮説を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題はアジアにおける基盤技術形成の国際比較研究である。現在、中国を中心としてものづくりが行われており、生産のアジア化という現象がおきている。これまで日本は製造業=ものづくりを中心に国際競争力を形成してきたが、中国、韓国、台湾といった東アジア諸国が台頭により、日本のものづくりの在り方、ビジネスモデルの構築の仕方が根本的に問い直す必要にせまられている段階に来ている。そこで本研究では、最近進境著しいアジア各国の工業技術水準の科学的評価すなわち、どの程度のものづくりが可能であるのかを検討するために基盤技術の形成過程に着目して比較研究を行ってきている。 上述の問題意識の下で、この2年間中国および韓国、台湾の基盤技術形成に関する実態調査を行ってきている。基盤技術としてとりあげたのは金型や伸線業をはじめとし、自動車や電気機器産業における部品工業を中心に当該国のローカル企業のヒアリング調査を中心に行ってきた。 これらの産業に属する企業を中心に設計から製造過程およびユーザー企業との取引関係に着目し、どういった製品カテゴリーのものをどういった企業あるいは国に供給しているのか、そして、当該製品の品質水準、技術水準のレベルを一つの基準を基にして比較検討してきた。その結果、日本、韓国、台湾、中国といった東アジア諸国におけるものづくりを比較した際に一定の各国特徴が見えてきているのが現段階での調査結果を踏まえての到達点である。 残された課題としては、タイをはじめとする東南アジア諸国における技術形成を検討する必要があることから、この点についてはまだ未着手であり、残された研究期間において遂行し、研究成果をまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度が本プロジェクトの最終年度である。平成23年度、平性24年度の調査結果を踏まえて本研究の目的であるアジアにおける基盤技術形成の国際比較について最終報告書をまとめる作業を行うことになる。最終調査をまとめるにあたり、これまでおこなってきた中国、韓国、台湾の調査に関しては一定の成果をみることができているがまだ調査サンプルが少ない部分があることからこれまでの調査結果を精査して補足調査が必要な国、産業については補足調査を行う予定である。 また、これまでの調査は東アジア地域を中心に行ってきたが、現在、ASEANN諸国が部品供給基地あるいは最終組立基地としてプレゼンスを上げてきている。とりわけタイについてはモノづくりに関する総合的なインフラが整備されてきており、工業先進国も含めて、タイはものづくりの基地として再び脚光を集めている地域である。このような理由からこれまの調査に加えて、東南アジア地域の代表的な地域としてタイをとりあげ追加調査を行い比較研究を行う予定である。この地域に関してはもともと調査を行う予定であったが、水害等の影響で調査を延期していた地域である。 上述の調査に加えて、文献・資料の収集と検討を行う。アジア地域を中心とするものづくりの調査研究はこの間相当程度出てきている。しかし、アジア諸国の発展・変化が激しいことからどの調査研究も陳腐化の速度が速いという側面がある。しかし、これらの文献をサーベイすることにり過去の変化は知ることが十分に可能でこつから、これらの調査研究資料を用いいてアジア諸国における工業発展お動態的変化を検討することも研究の推進の一つの柱となる。 以上、補足調査、追加調査および既存の調査研究資料の検討・分析を通じて残り1年で最終成果報告書を作成する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)海外調査(海外渡航旅費):今後の研究の推進方策で述べたとおり、海外調査については補足調査および追加調査を行う予定である。調査時期は夏期および冬期休暇を期間において2カ国ほどの海外調査をそれぞれ1週間程度行う予定である。 (2)国内調査(国内旅費):国内調査についても、中国、韓国、台湾、タイといった国に製造基盤をもっている国内企業について調査を行う予定である。この調査については、随時、典型的な企業を調査していく予定であるが、最近アジアとの親交が深い九州地域や基盤的技術が集積している東京地域の企業を中心に行う予定である。 (3)資料文献収集:アジア経済研究所、機械工業図書館を中心にアジア経済に関する調査・研究資料を収集する。 (4)報告書印刷費用:海外および国内調査結果をヒアリング資料集として印刷するとともに、最終成果報告書を印刷する。
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