2011 Fiscal Year Research-status Report
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23501209
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
宇仁 義和 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (00439895)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 鯨類 / 捕鯨 / アンドリュース / 国際情報交流 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究は日本の近代鯨類学の歴史的展開を明らかにすることを目的とし、その内容は1)ロイ・チャップマン・アンドリュースの日本での活動、2)日本の近代鯨類学草創期、3)「第一鯨学」の展開、4)マリンランド導入の歴史、である。今年度の実績は、1)ではアメリカ自然史博物館哺乳類文書庫に保管されているアンドリュースの手紙から日本関連分全部を撮影し、彼の撮影したオリジナルネガの一部を簡易複写した。手紙からは日本での支援者の氏名や役職が初めて明らかになり、深い関係を結んでいたことがわかった。また、1910年代中頃に東京大学の研究者が動物学雑誌に発表された日本産鯨類の学名を検討した論文がアンドリュースとの往復書簡を参考にしたらしいことが判明した。2)については電子媒体や借用可能図書について収集し、日本産哺乳類のリストは近世の本草学や地誌を利用してまとめられ鯨類も例外でないことがわかった。3)は琉球大学保管の資料の予備調査を実施した。4)では大型鯨類の飼育を試みた水族館の現地調査、1960年前後の水族館パンフレットや鯨類飼育関係のテレビ番組を収集した。現地調査では海岸地形を利用した鯨類飼育施設オセアナリウムが、日本の地方でも独自に考案実践されたことが推測され、資料からは1960年当時の展示方法が近年に至るまで水族館の教育展示の原型となっていたと考えられ、特定の研究者と水族館の展示手法が模倣され全国に広がった可能性が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)は順調に進んでいるが、2)と3)は出張機会が少ないため、電子媒体や借用可能資料の収集にとどまり、地方資料の収集や鯨類実物資料の発掘ができなかった。4)は聞き取り予定者との調整ができなくなったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)は予定どおりアメリカ自然史博物館での資料収集を継続するとともに、鯨類実物資料の収蔵先となった国立自然史博物館での資料調査を行なう。さらに国内での滞在地を訪問し、地方資料の発掘に努める。2)と3)は現地を訪問し、地方資料の収集と実物資料の発掘を進める。また科学者コミュニティ内部の資料が数少ないため、捕鯨会社や関連資料の調査を加える。4)については当初の想定していたマリンランド導入時のアメリカ西海岸からの影響が予想以上に少ないため、同地での調査は取りやめとし、代わりに西伊豆などで独立に試行された海岸地形を活かしたオセアナリウムについて現地調査と歴史調査を実施し、調査の過程で明らかとなった水族館の展示の原型や変遷の歴史や鯨類学との関係を重点的に調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費のおもな使途は旅費である。1)は予定どおりアメリカ東海岸への旅費とし、2~4)は研究の推進で述べた内容の該当地である、宮城、東京、神奈川、大阪、和歌山、山口、高知、沖縄などへの出張に使用する。学会発表は宮城と神奈川で予定している。
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