2012 Fiscal Year Research-status Report
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23501211
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
黒田 光太郎 名城大学, 大学・学校づくり研究科, 教授 (30161798)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 電子回折理論 / 学振第37小委員会 / 日本電子顕微鏡学会 / 電解研磨 / 転位 / 超高圧電子顕微鏡 |
Research Abstract |
前年度に入手していた日本学術振興会第37小委員会の活動に関する資料を分析することを進めた。戦前戦中の日本における電子顕微鏡および電子回折装置の製作状況を確認し、菊池正士によるKikuchi linesの発見以降の電子回折の実験および理論の展開を調べた。日本では戦前から電子回折の動力学的理論の研究が熱心に研究され、その研究状況を名古屋大学の上田良二はダイナミカル・ペストと表現していた。 学振37小委員会は1947年に活動を中止ししたが、49年には日本電子顕微鏡学会が設立され、装置作製とともに生物および非生物の応用研究が幅広く進められるようになった。金属をはじめとする材料研究では、試料の表面状態をうつしとったレプリカによる観察が先行したが、米国のベル研究所のHeidenreichによって1949年にアルミニウム合金の電解研磨による薄片試料作製技術が提案されてから、種々の金属合金にこの手法が適用されて、金属合金の内部構造が直接に観察されるようになった。1956年には、スイスのBollmannがステンレス鋼中の、英国のHirschらがアルミニウム中の転位をそれぞれ独立に観察している。日本では大阪大学の西山善次らが1963年にステンレス鋼のマルテンサイト変態を薄片化した試料で直接観察している。 電子顕微鏡の高加速電圧化は1950年代初めから進められ、50年代中期に日本では日立製作所と島津製作所で300kVの電顕が開発されている。1960年にはフランスのDupouyが1000kV超高圧電子顕微鏡を完成させている。上田らの名大グループと只野らの日立グループは共同研究で、東レ科学振興財団の援助を得て、500kV超高圧電顕を1965年に完成させている。 こうした主として材料研究における電子顕微鏡の導入期に関して、日本金属学会、日本科学史学会、化学史学会の講演大会で研究成果を発表してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
竹山太郎名誉教授へのインタビューを11月に北大で開催された顕微鏡学会シンポジウムの際に行った。当初夏期に計画していた橋本初次郎名誉教授へのインタビューは体調を考慮して来年度に行うことにした。清水謙一名誉教授や塩尻洵名誉教授から有意義な指摘をしていただいた。こうした先達の研究者へのインタビューは鋭意進行中である。 国立科学博物館の資料は、当館のつくばへの移転に伴って、利用が以前より容易でなくなり、本年度は利用する機会をもてなかったが、前年度に入手した資料の分析を行うことができた。 成果発表は関連する学会の講演大会で積極的に行ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本学術振興会37小委員会の活動に関する資料を国立科学博物館で閲覧し、系統的分析をを行う。戦後初期に活躍された電子顕微鏡研究者へのインタビューを行い、電子顕微鏡発達史のオーラルヒストリー研究を進める。電子回折理論の展開を文献の系統的分析から明らかにし、その発展過程をとらえなおして、理論と応用の関連性を追求する。日本の特徴である超高圧電子顕微鏡の開発とその応用研究に関して、総合的な調査研究を行う。 研究成果を学会誌に公刊するとともに、著作として取りまとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の繰越金は、2013年7月に英国のマンチェスターで開催される「第24回科学史、技術史、医学史世界会議」の参加旅費として主に使用する。次年度も、当初の計画のように旅費にかなりの経費を使用する予定である。
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Research Products
(5 results)