2012 Fiscal Year Research-status Report
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23501217
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 美香 昭和女子大学, 研究支援機器センター, 助教 (70276624)
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Keywords | 繊維鑑別 |
Research Abstract |
平成24年度は平成23年度にサンプリングした繊維原料の内、主に宮城、福島、群馬、栃木、長野、大分の6県で栽培された大麻繊維8種(同一生産地における生産時期の異なるものを含む)について、未処理もしくは前処理した試料および人工炭化後の試料の走査型電子顕微鏡による形態観察および繊維幅、断面積、周囲長を測定し、データの取得につとめた。これらの結果から、同一繊維種においても地域や年代によって、繊維の大きさに違いのあることが分かった。特に、大分県の大麻繊維は断面積値および周囲長において、他の全ての産地の繊維と有意差があり、突出して太いものであった。従って、繊維遺物を形態比較によって鑑別する際には、やはり形態観察に加えて、個体差や産地別のばらつきを考慮するために繊維の大きさの要素を加味して鑑別を行うことが望ましいと考える。さらに、これらの繊維を炭化させた場合や人工的に劣化させた場合の値の変化についても検討を加えて、さまざまな状況で出土・発掘される繊維遺物の形態比較による鑑別の確度向上に寄与するようなデータの蓄積を行っていきたいと考えている。 また、さらに幅広い繊維原料についてデータを収集するため、標品試料となる繊維原料の収集に努めた。平成24年度は、日本3大古代布のうちの「葛布」と「しな布」について、それぞれ産地である静岡県と山形県に赴き、自ら繊維を取得してきた。さらに、葛布については、日本最古の葛布とされる菖蒲ヶ浦遺跡(3-4世紀)から出土した葛布(九州国立博物館所蔵)を熟覧・撮影し、現代標品繊維との比較資料として調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
酵素法により人工劣化させ組織の脆くなった試料において、従来行ってきた方法では断面積測定に適応できる形態に断面作製することが困難であることが判明し、現在も新たな手法を検討中であり、これらのデータ(測定値)の取得が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は現在模索中の人工劣化後の繊維の断面作製に関して、更なる検討を加える。 また、日本3大古代布の内の未収集な「藤布」の繊維および、当初計画の沖縄産の繊維について収集を進めたい考えである。同時に、収集した繊維について、人工炭化および劣化させて分析し、データベース構築に向けての準備を進めて行く予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繊維原料の収集のための旅費および収集した繊維試料を分析する際の酵素台等試薬代と消耗品代。また、現在模索中の人工劣化後の繊維断面作製方法の検討。そして、データベース作成のためのソフトウェアおよびその環境作りのために使用する予定である。
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