2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501218
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
奈良 貴史 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (30271894)
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Keywords | 骨考古学 / 古人骨 / 火葬 / 出土人骨 / 法人類学 |
Research Abstract |
研究内容は2つの柱、考古学と人類学の分野に分かれる。まず、考古学的な研究として、日本全国で遺跡から焼人骨がどの程度出土しているのかを把握するために、埋蔵文化財発掘調査報告書を中心とした文献調査で焼人骨の集成を行った。さらに、考古学的な報告はなされているが、火葬人骨に関しては人類学的な検討を受けていない資料を抽出した。その中から、山梨県明野村深山田遺跡の16世紀の火葬施設から出土した焼人骨を借り出し研究をおこなった。次に人類学的な研究として、火葬された人骨の基礎的データの蓄積を図るため、前年度から引き続き火葬された人骨の総重量、および頭骨・体幹・四肢骨ごとに分類してそれぞれの重量を計測した。さらに火葬骨の収縮率をみるため、鎖骨・上腕骨、大腿骨、脛骨、腓骨に関しては晒骨にしてMartinの計測項目、最大長、骨幹最大幅、骨幹最大幅、骨端最大幅等を計測し、焼成後も計測可能な部位に関しては計測し、収縮率を求めた。解剖学実習履修学生の大幅な減少により実習遺体も半分に減り、当初予定の資料数まで達成できなかったが、収縮率は脛骨上端幅(Martin no.3)で10.75%、脛骨下端矢状径(Martin no.7)で11.15%である。先行研究では15%あるいは30%との報告があり、当研究成果は今のところ既知のデータよりか低い値が出ている。今年度も継続して調査を行い十分な資料数を確保して統計学的な検討を行い、本研究成果の妥当性を判断する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当研究の特徴の一つは、解剖学実習に用いた遺体を遺族に火葬して返却する際に火葬場で焼人骨を観察・計測することである。当然火葬場は研究機関ではなく、民間の施設でありさまざまな制約が生じる。幸いにも新潟市青山斎場の職員のご理解を得て、焼骨の観察を行えるが、解剖学実習遺体の火葬は、一般の利用少ない友引の日にしか行えないので、授業などの公務と重なった場合は立ち合うことができない。また、同時に複数体火葬にするため同時に観察できる個体が限られるなど研究の遅延の原因となる。さらに解剖学実習に使用される遺体の数は、毎年実習生の数により決定される。日本歯科大学では昨年度の解剖学実習を履修した2年生は56名とこの科研費の申請書を提出した平成22年度の学生106名の約半数であり、実習遺体も当初の予定より大幅に減少した。従って予定される資料数を確保できていないのが現状であり、遅延の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の最終年度であるのでこれまでの遅延を取り戻さなければならない。まず、火葬された個体数を確実に確保するために、今年度も実習遺体の観察をこれまでと同様に引き続き行う。幸いにも今年度は日本歯科大学新潟生命歯学部の学生も増加し、前年比30%以上の遺体の増加が見込まれる。また、今まで解剖学実習室と火葬施設の作業は申請者一人で行っていたが、肉眼解剖学および骨学に精通している連携研究者にも解剖遺体の剖出、骨の計測に加わってもらい、作業の効率化を図る。さらに限られた時間内の火葬施設内での観察をより効率的に行うため、ここでも連携研究者に今年度から立ち会ってもらうようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度までにデータ解析に必要なソフト等は一通り揃えたのでので、今年度はデータを打ち込むアルバイトの謝金と連携研究者に解剖と焼骨の計測のために新潟に来てもらい出張費を主に計上する。
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