2012 Fiscal Year Research-status Report
動物園を舞台とした教育・啓蒙活動における専門的実践家の役割とその効果の解明
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23501226
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
町田 佳世子 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (40337051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 奈美子(河村奈美子) 大分大学, 医学部, 准教授 (50344560)
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Keywords | 動物園 / 飼育担当者 / 語り / 自然系博物館 / 認識変化 / 効果検証 |
Research Abstract |
自然科学系の博物館施設の1つである動物園をフィールドにして、飼育担当者や学芸員の資格を持つ職員が行う教育・啓蒙活動の効果検証や成功要因の抽出について研究を進めてきた。特に市民を対象に主催する動物園での飼育体験は、飼育担当者が参加者に動物の生態や特徴、飼育の仕方、動物園の役割などを直接伝える数少ない機会であると考え、そのような場で、飼育担当者が参加者に何を伝え、参加者は何を得るのかを質問紙や聞き取り、体験中の飼育担当者の発話分析などを行い継続的に調査してきた。 2012年度も調査を継続し、特に飼育体験参加者の視点から、飼育担当者が伝えたい思いがどのように伝わっているのかについて評価を試みた。参加者が大人の場合は、体験後に実施するインタビューの内容から評価を試みたが、体験者が子どもである場合、聞き取り調査では体験によって得たものを言葉で適切に表現できない場合がある。そのため2012年度は体験直前・直後に実施する子どもを対象としたアンケートに修正を加え、体験前後での潜在的な認識の変化を引き出すことを目的として、動物園の動物に対して思い浮かぶ言葉について回答を求める質問項目を付け加えた。この質問は連想ゲームのように直感的に回答ができるという特徴をもっている。得られた回答を質的に分析した結果、体験後に書かれた言葉からは、「体調管理」「餌の工夫」「掃除の重要性」「動物の生態と特徴」「動物園の役割」などについて記述が増えていることが分かった。このことは飼育担当者の伝えようとした内容が参加者の印象に残ったことを示している。また、体験前後の言葉の内容変化に着目すると、体験前に比べ体験後には動物の外的印象(かわいさ、大きさなど)だけでなく、動物行動の描写、飼育する立場から動物を捉える表現が含まれるようになり、動物を見る視点に変化が生じていることもうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査フィールドである動物園施設において積極的な調査協力を得ているので、飼育担当者・体験参加者に対して実施する調査はアンケート・聞き取り・発話録音すべて順調に実施できている。ただし2012年度は大規模な施設新設・移転に伴う動物の保護のため大人を対象とした飼育体験の実施が年3回から年1回となり、改良を加えたアンケートについての大人のデータ数が十分とはいえなかった。2013年度は年3回の実施に戻るため、順調にデータ収集ができる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究から、専門家である飼育担当者や学芸員の語りのうちどのような内容が参加者の印象に残り、認識変容を促すかについて明らかになりつつある。それと同時に参加者の動物接触の経験や背景知識の程度により、同じ解説内容であっても印象に残る度合いや認識の変化の程度に違いがあることも見えてきた。また飼育担当者の経験年数により語りの仕方や内容が異なり、そのことが参加者の満足感にも影響することがうかがえた。従って今後は担当者の経験年数や知識と参加者の経験・背景知識を変数に含め、それらが解説内容と解説方法に与える影響を明らかにすることを試みる。また飼育担当者の経験の累積による通時的変化を探究するため、経験年数の少ない飼育担当者を対象とした継続的な調査を行う予定である。 これまでは生命を扱う自然系博物館での教育・啓蒙活動を対象としてきたが、一定の成果が蓄積されてきたので、今後はさまざまな博物館を視野に入れ、他の博物館施設の教育担当者と連携することを進めたい。これまで実施してきた調査方法を適用し、そこでの専門家である学芸員の語りや解説内容・解説方法、展示方法が来館者の認識変容に与える効果や教育活動の成功要因を抽出することを試みる。そのことにより、生涯教育・社会教育の場である博物館施設のより効果的な活用につなげていくことができると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度執行において未使用額があったのは、調査協力施設の都合で調査日が年度はじめの予定より減ったため、調査用物品の購入金額が予定よりも少なかったことによる。平成25年度も引き続き動物園での調査活動を継続するので、調査実施と得られたデータの分析にともなう経費を必要とする。また質的データを処理するためのソフトウェアおよび関連機器の購入を予定している。 成果発表と他の自然系博物館・動物園での参加体験型プログラム内容および効果検証方法の聞き取り調査のための旅費を支出する。
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Research Products
(2 results)