2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501230
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
江口 誠一 日本大学, 文理学部, 准教授 (00301789)
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Keywords | 博物館学 |
Research Abstract |
過去の地域景観を復原するために、千葉県中央区から得られたボーリングコアについて植物珪酸体分析を行った。主な分類群の層位分布を比較すると、下位層と上位層で組成が異なる傾向が読み取れた。下位層は、ヨシとタケ亜科が多産し、特にネザサ節が顕著であった。上位層ではそれらが減少し、イネやシバ属が続けて産出、ヒエ属、コブナグサ、スゲ属などの水田雑草となり得る植物も見られた。また、放射性炭素年代測定値も新たに2点加えられ、地層の年代スケールも細分化された。これらから、調査地が水田域となった時期は古墳時代で、以降継続的にその景観が保たれていたと考えられた。イネは、組織状を含め機動細胞と短細胞が同時に産するのみならず、籾殻である穎の珪酸体も見られた。さらに、畦畔などに多いシバ属も層位で連続し、組織状も含まれ、水田雑草の植物も散見されることで、考えを強めることとなった。 鳥瞰からの地域景観に関する調査では、主に湿地を中心に行われ、そこで見られる鳥類の種構成や個体数、生息環境を記録し、植生情報はデジタル・マッピング化した。その結果、利根川下流部から河口部にかけ種分布が異なっていた。シギ・チドリ類は下流部の水田に多く見られ、河口部ではカモメ類が多かった。水田が隣接した利根川では、鳥獣保護区内でカモ類が多かったが、それ以外の地域ではほとんど見られなかった。そして、水田が多い地域にはサギ類やカモ類が分布し、河口部になるにしたがって海鳥類が多くなるなど、利根川水系の河川の上流から河口部の地形と鳥類のかかわりついて留意し、千葉県立中央博物館大利根分館にて「空飛ぶいきものたち展」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の地域景観に関する自然科学的分析の成果が具体的に出始めたとともに、鳥類およびその生息環境調査も順調にデータが蓄積されている。またそれらに関する成果も博物館にて展示公表され、反響についてのアンケート調査も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
調査・分析作業を進めるとともに、得られたデータを総合的に解釈することでまとめとする。またそれに関する成果を展示として表現し、地域の市民から内容についてアンケートを求め、意見を総合的に解析し、今後の研究展望につなげていく。とくに展示を通して得られた意識の変化については積極的に取り入れ、次回の研究事業の立案につながることとする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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