2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23501230
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
江口 誠一 日本大学, 文理学部, 准教授 (00301789)
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Keywords | 博物館 / 植物珪酸体 / 鳥類化石 / 野鳥 / 千葉県 |
Research Abstract |
過去の地域景観を復原するために、千葉市内のボーリングコア上部層から産出した、完新世後期である弥生時代以降の植物珪酸体化石群を記載し、植生と人間活動の関係を中心に古環境変遷史を明らかにした。人間活動との関係から分けられた画期を境界とする時代区分が生物層序から導き出された。画期以前の弥生時代は台地上や崖地の林床部にササ類が繁茂していたが、低地域におけるハンノキ湿地林の人為的伐採の後にヨシ群落の拡大へと変化を遂げた。画期後の古墳時代になると水田稲作が本格的に行われ、その景観が近代にいたるまで継続的に見られた。 過去と現在の時間単位、および上空と地上の空間単位の二つのベクトルをつなぐ意味で、これまで千葉県内の遺跡から産出した鳥類化石をリストアップし、鳥類相とそれらの生息環境を過去にさかのぼって考察することを試みた。その結果,他の化石群に加え鳥類化石を用いることで当時の環境を推察することができ、示相化石としての有効性も確認できた。 鳥瞰からの地域景観に関する市民団体との調査では、主に水辺で見られる鳥類の種構成や個体数、生息環境を記録し、植生情報はデジタル・マッピング化した。利根川流域では下流部から河口部にかけ種分布が異なり、水田域にはサギ類やカモ類が分布し、河口部になるに従い海鳥類が多い結果となった。下流部ではシギ・チドリ類、河口部ではカモメ類、水田が隣接した本流ではでカモ類がそれぞれ多く見られた。また、湿地に広く分布するウ類に関しては、東京湾岸にカワウ、利根川河口域や外房海岸、にウミウが多かった。 これらの成果を数度にわたり千葉県立中央博物館大利根分館にて展示紹介した。期間中のアンケートでは、好印象の感想が得られた上、地元住民による身近な風景を再評価するコメントもあった。県内において異なる地域の住民同士で、一つの景観に対する共通認識が得られたことで、相互理解への足がかりとなった。
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