2013 Fiscal Year Annual Research Report
標本と文書資料を統合した博物学資料に基づく日本の哺乳類学黎明期の解読
Project/Area Number |
23501232
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
川田 伸一郎 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (30415608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 格 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (70125681)
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Keywords | 博物館資料論 / 哺乳類 / 科学史 |
Research Abstract |
当該年度は代表者の調査補助者が英国自然史博物館を訪問し,明治から昭和初期にかけて採集された翼手類・霊長類・食肉類などの標本について調査を行った.また標本に付随するラベル情報のリスト化,および台帳情報の記録により,調査標本の二次データを取得した.国内調査としては,千葉県我孫子市所在の山階鳥類研究所を訪問し,同時代に収集された標本に関する調査を行った.過去2年間のデータと上記データを統合して,本研究課題で予定していた情報収集は完了したこととなる.一方文献調査としては,動物学雑誌創刊号から1920年度までの巻号について目を通し,哺乳類関連の文献を抽出した. 以上の結果を総括して,明治から昭和初期における日本産哺乳類の収集の歴史に3つの時期に分けることができると考えられた.第一期は明治維新から1890年までの時期で,このころはまだ哺乳類の研究自体が日本人研究者により行われることがなかったため,欧米から訪問したお雇い外国人や採集人の手により全国的な収集が行われた時期である.標本は欧米の博物館に送られ,外国人の手によって研究が行われた.第二期は在日外国人によって日本人助手を伴う大規模な調査計画が立てられた時期で,1890年代から1910年代が該当する.この時代を主に先導した在日外国人として,横浜の貿易商アラン・オーストンがある.彼は欧米からの日本産動物標本の購入依頼に対して,多くの日本人採集人を育成し,全国的また南洋諸島やアジア大陸にまで手を広げて収集活動を行った.彼の協力を得て,東京大学では脊椎動物に関する研究が促進され,次第に自国の動物を研究する者が増加していくこととなる.第三期は1920年以降となる.哺乳学は鳥類学にやや遅れをとりつつ,この時代から日本人による本格的な哺乳類相の研究が始まり,戦後の哺乳類学の発展へと下地を作っていくこととなった.
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