2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501245
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
戸所 隆 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80066745)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 新しい開発哲学 / 知識情報化社会 / 分権型地域づくり / 自然と人間の共生 / ヒューマンスケール / 減災型地域づくり / 横断国土軸 / 東日本大震災 |
Research Abstract |
工業化社会から知識情報化社会に時代が転換する中で、これまで国のかたちを構築してきた社会基盤整備の在り方が混迷している。この混乱を収めるには知識情報社会に適した国土形成の在り方を示す開発哲学の樹立が不可欠となる。また、東日本大震災の復興や人口縮減社会への対応にも、新たな開発哲学が必要である。本研究は以上の視点から分権型知識情報化社会における開発哲学の構築を目指している。 新しい開発哲学を構築するため、平成23年度は次の調査・研究を行った。(1)これまで国土基盤整備や都市開発に携わってきた研究者・実務家・政治行政関係者への聞き取り調査と議論、(2)ドバイやポルトガル、北海道や舞鶴など国内外における新旧国土基盤整備の動向に関する実態調査および開発の在り方に関する現地聴き取り調査、(3)東日本大震災の被災地調査を通して、復旧・復興について新たな開発哲学の視点からの提言である。 以上の調査研究から、新しい開発哲学の構築には、開発スケールを巨大指向からヒューマンスケールへと転換し、人間と自然が共生する必要性を改めて認識できた。人間は自然の一部であり、自然の摂理を十分に認識し、自然と共生するために科学技術を活用しなければならない。また、強者の論理・資本の論理中心の従来の政策から、弱者の論理・地域の論理中心への転換が求められる。 以上の視点から大震災地域の復興に関しては、平成23年度の成果として次の事項を見いだした。すなわち、(1)完全防災型でなく自然と人間の共生する減災型地域づくり、(2)自然破壊力を軽減する技術開発、(3)自力更生型復興を可能にする自律発展型自立地域の形成、(4)メンタルマップの描きやすいコンパクトな地域づくり、(5)拡大・年輪型市街地形成から積み重ね再開発型市街地形成への転換、(6)パートナーシップ型応援システムの導入と創造力の喚起、(7)高規格交通基盤と横断国土軸の整備が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を始める直前に、東日本大震災が発災し、日本は政治的にも社会経済的にも混乱を極めてた。そのため、本研究が問題とした研究テーマに関する地域現象が随所に顕在化し、研究材料に事欠かない状況にある。また、本研究テーマであるこれまで国のかたちを構築してきた大型公共事業・社会基盤整備の在り方や、開発のあり方、復興の考え方などへの国民的関心も高まった。 そのため、本研究に理解を示す人々が多く、研究協力も得やすく、研究をしやすい環境にある。また、新しい研究テーマであるにもかかわらず、日常的な教育研究活動とかなり一体的に行うことが可能であり、順調に研究を進めている。 なお、研究協力者との調査日程が合わず、一部調査が次年度に繰り延べになった。以上の理由により、当初の計画以上の進展とはいかないが、本研究はおおむね順調に進進展しており、今後もそれが期待できるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究を継続的に行うと共に、研究対象や地域を広げて研究する。 (1)東日本大震災被災地・大型公共事業の中止地域における継続的調査を行い、その実態とそれに対する自治体・経済団体・住民・その他の反応を持続的に把握する。また、それによって第1年目同様に知識情報化社会に対応した新たな国土構造の構築への影響を評価する。調査研究地域は群馬県吾妻郡長野原町の八ッ場ダム関係地域、熊本県南部を流れる球磨川支流の川辺川ダムや北陸新幹線建設地域における動向や意識調査を実施する。 (2)アジア型地域開発手法を用いてきた沖縄について、北海道の開発手法と比較しつつ、新たな開発動向への地域社会・政策担当者の対応関係に関する実態調査および開発の在り方論に関する現地聴き取り調査を行う。 (3)新潟県上越市や青森県の調査は継続しつつ、現地聴き取り調査を随時全国各地に広げながら、新たな分権型都市構造の構築や地域間連携を念頭に置いた開発哲学の樹立を試みる。また、活力を失いつつある地方都市における新たな開発の在り方を模索すべく、前橋や高崎等の中心街調査を行う。 (4)外国における国土基盤・社会基盤整備に関する開発哲学を研究するため、アジアやイタリアに関する実態を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の性格上、使用研究費は調査研究旅費が中心になる。また、現地調査研究に際して必要となる物品費が少額であるが必要となる。また、地方都市における新たな開発の在り方を模索するための調査補助謝金を使用する。 平成23年度から24年度に247,004円の繰越金がある。この金額は研究協力者との調査研究費であり、協力者との日程が合わないために24年度に繰り越したものである。従前の予定に基づき、24年度に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)