2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501245
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
戸所 隆 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (80066745)
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Keywords | 新しい開発哲学 / 知識情報化社会 / 分権型地域づくり / 自然と人間の共生 / ヒューマンスケール / 減災型地域づくり / コンパクトなまちづくり / 東日本大震災 |
Research Abstract |
工業化社会から知識情報化社会に時代が転換する中で、日本では政権交代や東日本大震災、人口縮減などもあいまって、国のかたちを構築する社会基盤整備の在り方が混迷している。この混乱を収めるには知識情報社会に適した国土形成の在り方を示す新たな開発哲学の樹立が不可欠となる。本研究は以上の視点から分権型知識情報化社会における開発哲学の構築を目指している。 開発哲学の構築を目指して平成24年度のおいては、次の調査・研究を行った。すなわち、①国土基盤整備や都市開発に携わる研究者・実務家・政治行政関係者への聞き取り調査と議論、②中国・山西省、九州や豊岡、新居浜・大阪など国内外における新旧国土基盤整備の動向に関する実態調査および開発の在り方に関する現地聴き取り調査、③東日本大震災地域における復旧・復興のあり方について調査研究である。その上で、それらの調査を基に、新たな開発哲学の構築を模索した。 人間は自然の一部であり、自然の摂理を十分に認識し、自然と共生するために科学技術を活用する必要がある。また、開発スケールを巨大指向からヒューマンスケールへと転換し、強者の論理・資本の論理中心の政策から弱者の論理・地域の論理中心への転換を図ることが、新しい開発哲学の構築に欠かせぬ理念であると考えている。以上の理念を具体的な都市構造の在り方として考えると、EUの統合にも通じる自立的・分権的な小都市が水平的にネットワークしつつ大都市としての機能を発揮する大都市化分都市化型都市構造の重要性を再認識しつつある。 以上の視点から、調査研究をすると同時に、学会や講演会、政策現場において提言を重ねた。また、日本学術会議などの政府機関やマスコミなどを通じて可能な限り研究成果を情報発信すべく努力し、研究成果の一端を社会に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請・採択時は時代の転換・社会構造の変化や自民党政権から民主党政権への転換によって国のかたちづくりは混乱していた。そのため、知識情報社会に適した国土形成の在り方を示す新たな開発哲学の樹立が不可欠であったものの、社会一般におけるかかる認識は低かったといえる。しかし、本研究を始める直前に東日本大震災が発災し、日本は政治的にも社会経済的にも混乱を極め、本研究テーマに関する地域現象が随所に顕在化し、研究材料に事欠かない状況にあるとともに、新たな開発哲学の必要性に対する社会一般の認識も高まり、研究への協力を得やすくなった。とりわけ、昨年末における新たな政権交代による国土強靱化政策への転換によって、調査研究がしやすい環境となっている。 たとえば、本研究テーマであるこれまで国のかたちを構築してきた大型公共事業・社会基盤整備の在り方や開発のあり方、震災復興の考え方や領土問題などへの国民的関心も高まった。そのため、「新たな開発哲学の樹立」という概念的な研究テーマにも係わらず、本研究の必要性を比較的短時間で理解していただける様になり、研究協力が得やすくなった。さらに、新しい研究テーマであるにもかかわらず、日常的な教育研究活動とのかなり一体的に行うことが可能となっている。 なお、研究費の使用が予定より少なく済んだが、海外調査先の変更と調査協力の賜物である。すなわち、中国での調査を優先したため予定していたイタリアでの調査研究が時間的にできなかったことと、中国調査に本研究費を使用せずに済んだことによる。また、研究協力者も他の外部資金を活用して研究協力をしたため、研究成果を上げつつも経費節減となり、25年度研究資金へ回せることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23・24年度の研究を継続的に行い、これまで研究してきた研究内容を深化させつつ、対象事業や地域を広げて研究する。 ①東日本大震災被災地・大型公共事業の中止地域における地域の変化過程を継続的に調査する。また、地域や時代の変化の実態とそれに対する自治体・経済団体・住民・その他の反応を把握する。調査研究地域は群馬県吾妻郡長野原町の八ッ場ダム関係地域、熊本県南部を流れる球磨川支流の川辺川ダムや北陸新幹線建設地域における動向や意識調査を実施する。その上で第1年目・2年目同様に事業の進め方がいかに国土構造の構築に影響するかを評価し、知識情報化社会に対応した新たな開発哲学の構築の一助とする。 ②アジア型地域開発手法を用いてきた沖縄について、北海道の開発手法と比較しつつ、新たな開発動向への地域社会・政策担当者の対応関係に関する実態調査および開発の在り方論に関する現地聴き取り調査を行う。特に自然と人間との関係を重視する。 ③新潟県上越市や青森県の調査は継続しつつ、現地聴き取り調査を随時全国各地に広げながら、新たな分権型都市構造の構築や地域間連携を念頭に置いた開発哲学の樹立を試みる。また、北陸新幹線の延伸が地域社会に与える影響を、東北地域と比較しつつ研究する。 ④外国における国土基盤・社会基盤整備に関する開発哲学を研究するため、ヨーロッパを中心に実態を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の性格上、使用研究費は調査研究旅費が中心になる。特に最終年度となるため、北海道・青森と沖縄、そして北陸新幹線関連地域を重点的に調査研究し、研究協力者との綿密な情報交換と調査を実施する予定である。また、海外調査ではヨーロッパを重点地域として旅費を使用する予定である。 調査物品費はこれまでほとんど使用していないが、早い段階でデータ処理や保存のためのノートパソコン(10万円程度)を機種更新し、それに伴うソフトの更新も行う。また、現地調査に伴う物品費が必要最小限必要になる。
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Research Products
(11 results)