2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501252
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 和之 立命館大学, 文学部, 講師 (40469185)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 講師 (30401425)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 交易ネットワーク / 畜産物 / 交易センター / ヒマラヤ / ネパール |
Research Abstract |
本研究は、自動車道路の開通した現在でも、ヒマラヤ交易が形を変えて継続していることを、ネパール国内での現地調査によって実証する。特に畜産物に注目し、その生産から消費に至る流通経路を調べることで、交易を支える諸条件を明らかにすることが目的である。具体的には、(1)山地における畜産物の流通過程、(2)山地における交易と自動車道路との相互関係、(3)交易センターとしての首都の役割を解明することで、(4)畜産物の生産から消費に至るフローを分析し、交易ネットワークを支える諸条件を考察するものである。 初年である平成23年度は、おもに東部高地、東部中間山地、中部低地において現地調査をおこなった。東部山地では、代表者の渡辺が羊毛交易の調査をおこなった。この結果、山ではスイスの援助で設置されたチベット難民の絨毯工場が閉鎖され、首都圏に統合されたことがわかった。また、東部中間山地では、渡辺が調査をおこなった。この結果、ネパール産羊毛を使った敷物も担い手不足から減少傾向にあるが、まだ羊毛製品に対する需要はあるため、羊毛を入手しやすく、家族の援助がある人が細々と続けていること、その一方で首都圏では国外から輸入した羊毛で敷物生産をしている例があることもあきらかになった。さらに、中部低地では、研究分担者の橘が豚肉の交易について調べた。中部低地では猪を捕えて大きく飼養し、肉として売ることがある。実際首都では猪肉を売る店があり、猪肉の一部は、自動車道路を通じて、首都まで流通する交易ネットワークになっていることがわかってきた。 以上の成果については、生き物文化史学会、日本地理学会で発表し、現在論文を作成中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の段階では、初年度の調査は東部高地、中部高地で調査をおこなうとした。しかし、研究代表者の渡辺と研究分担者の橘で協議した所、確実に成果をあげるためにはこれまで各自が調査をおこなってきた土地勘のある場所でまず調査をするのがよいだろうという結論に達した。このため、東部高地(羊毛)、東部中間山地(羊毛)、中部低地(猪肉)の調査に変更した。 結果的にいずれの畜産物も首都カトマンズと関係していることが明らかになり、今度、首都カトマンズで交易センターとしての役割を調査する際にもつながる成果を残すことができた。一方で、中部高地と東部低地については、次年度以降の課題となってしまったが、初年度の調査が順調に進んだため、平成24年度中に調査を終了することが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今度の研究としては、1.中部高地と東部低地の畜産物交易に関する調査、2.首都カトマンズにおける交易センターとしての役割に関する調査、3.国境を越える畜産物の調査、4.研究成果の発表の4点になる。 このうち、中部高地については渡辺が、東部低地については橘がおもに担当する。また、これまでわかった羊毛や猪肉の交易についても、首都カトマンズの側から流通に関する調査をおこなってゆく。初年度までの調査で首都カトマンズと交易ネットワークのある畜産物交易を調査したため、あとはどのようなプロセスで流通してくるかが調査を遂行する上でのポイントとなる。 初年度までの調査では、国境を越える畜産物の調査までほとんど手が回らなかった。東部高地や中部高地については、チベット側との交易もあるし、東部低地や中部低地にはインド国境を越える畜産物交易もある。まずこれらの地域でネパール側から十分に調査をしたあと、必要に応じてインド領やチベット領でも調査をおこなってゆく。 研究成果の発表について、本年度は国内学会での発表にくわえ、国際学会でも発表してゆく。具体的には、平成24年にドイツのケルンで開催する国際地理学会で発表する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上の研究計画を推進するため、次年度である平成24年度には、海外旅費として、現地調査(ネパール、インド、チベットなどへ1回×2人)に関わる旅費、国際学会(ドイツへ1回×2人)に関わる旅費、国内旅費としては、生き物文化誌学会もしくは地理学会(福岡もしくは東京へ1回×2人)に関わる旅費を計上した。 また、物品に関しては、初年度に購入しなかったGPSの購入費用を計上した。初年度には土地感のあるところで調査したため、購入を見送ったが、次年度にははじめてゆく場所もあり、またこれまで調査してきた場所の近くにも地図に記載されていない自動車道路がたくさん開通しており、その軌跡をマッピングするために用いるつもりである。
|
Research Products
(8 results)