2011 Fiscal Year Research-status Report
炎症関連大腸発がんにおけるレプチンシグナル系の関与
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23501262
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
甲野 裕之 金沢医科大学, 看護学部, 教授 (20221236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾山 武 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00515314)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 炎症とがん / レプチン / 発がん / 高脂血症 |
Research Abstract |
近年、内臓脂肪蓄積を基盤とした肥満と大腸発がんとの関連が注目され、肥満と発がんを繋ぐ分子機構が徐々に解明されつつある。大腸発がんでは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの分泌異常の関与が指摘されており、肥満関連の動物発がん実験においてレプチンシグナル系の異常と大腸発がんとの関連性が示唆されている。 本研究では、アディポサイトカインの一つで、肥満のみならず炎症や免疫にも関わることが知られているレプチンに注目し、レプチンシグナル系異常肥満マウスならびにレプチンシグナル系に異常がなく高レプチン血症をきたしている肥満マウスを用いて、レプチンシグナル系よる炎症関連大腸発がんへの関与について検討を行い、レプチンシグナル系の修飾による大腸発がんの予防や治療の可能性を探ることを目的としている。この目的遂行のため、レプチンシグナル系の異常により肥満を呈するob/obマウス(レプチン欠損)およびdb/dbマウス(レプチン受容体異常)を用いた炎症関連マウス大腸発がん実験を行い、レプチンと炎症関連大腸発がんとの関連ならびに炎症関連大腸発がんに係る因子の解析を行う。さらにKK-Ayマウス(polygenic系)を用いてレプチンアンタゴニスト投与による発がん修飾作用を観察し、炎症関連大腸発がんにおけるレプチンの関与およびレプチンの修飾によるがん予防や治療への可能性についても検討することを計画している。平成23年度はob/obマウスを用いた炎症関連大腸発がんの誘発とレプチンによる修飾について検討を行った。レプチン投与群では個体あたりの平均腫瘍数が有意に低下しており、さらにレプチン投与群において、血清総コレステロール濃度ならびにLDLコレステロール濃度の有意な低下が観察された。これらの結果より、レプチンによる大腸腫瘍形成の抑制作用が血清コレステロール濃度の改善を介して生じている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はレプチン欠損マウス(ob/obマウス)を用いた炎症関連大腸発がんの誘発とレプチンによる修飾について検討を行ったが、今まで実施してきた炎症関連大腸発がんの誘発の実験条件(C57BL/6マウスなどで行っている通常のプロトコル)で実施した際に多くのマウスが死亡したため、実験条件の変更(最終的にはdextran sodium sulfateの濃度を2%から1.5%に変更)を余儀なくされ若干の計画遅延が生じた。しかし、予定していた動物実験ならびに病理組織学的解析、血液生化学的解析は計画通り終了し、現在大腸がん組織の免疫組織学的解析ならびに平成24年度の計画にある炎症関連因子のmRNAおよび蛋白発現量の変化について解析を行っている。また平成24年度に予定しているレプチン受容体変異マウス(db/dbマウス)を用いた実験を計画通り開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の結果を基にして、レプチン投与による大腸がん組織での炎症関連因子のmRNAおよび蛋白発現量の変化についての解析を行い、加えてレプチン受容体変異マウス(db/dbマウス)を用いてレプチンシグナル系の異常ならびにレプチンシグナル系の修飾と大腸発がんとの関わりを解析する。さらに高レプチン血症を呈するpolygenicな肥満マウス(KK-Ayマウス)を用いて、炎症関連大腸がん発生に対するレプチンアンタゴニストの発がん修飾作用に関する検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用に関しては当初の計画通り、動物実験ならびに種々の解析に使用する消耗品(実験動物費、試薬費、実験器具費)に加え、研究成果の発表のための国内旅費、標本作成委託費、論文の校閲費に使用する。
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