2013 Fiscal Year Annual Research Report
テストステロン曝露による前立腺エピゲノムの攪乱とその分子機構の解明
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23501263
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山下 聡 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80321876)
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Keywords | DNAメチル化 |
Research Abstract |
DNAメチル化異常は発がんに重要な役割を果たすことが知られるが、慢性炎症以外に明確な誘発要因は不明である。特に、前立腺がんや乳がんなど慢性炎症の関与が乏しいとされるがんでの誘発要因は不明である。本研究では、テストステロン過剰状態がDNAメチル化異常を誘発することを実証し、テストステロン過剰状態によりDNAメチル化異常が誘発される機構を解明することを目的とした。 昨年度までに、正常前立腺では非メチル化状態であるが、前立腺がんではメチル化されている遺伝子を合計5個(Aebp1, Amn1, Mmp23, Nkx3.1, Tgfbr2)同定した。テストステロンを皮下投与したオスF344ラットの前立腺背側葉において、同定した5個のマーカー遺伝子のプロモーター領域のメチル化状態を解析した結果、Amn1およびMmp23のDNAメチル化異常の増加を認めた。また、テストステロン過剰状態により前立腺において慢性炎症に類似した状態が誘導され、DNAメチル化異常を誘発した可能性が示唆された。 本年度は、テストステロン過剰状態により前立腺において慢性炎症に類似した状態が誘導される機構について解析した。テストステロン過剰により慢性炎症類似の状態になった前立腺においては、バクテリアゲノムの増加は認めず、感染の影響は無いものと考えられた。一方で、細胞増殖の指標であるKi67 indexは加齢に応じて低下するが、テストステロン過剰状態だと低下は認められないことを見出した。過剰な細胞増殖に伴う細胞死が炎症の原因になっていることが示唆された。 本研究により、DNAメチル化異常の誘発要因として、テストステロンが関与していることが初めて明らかになり、炎症反応の関与が示唆された。今後、テストステロン曝露によるエピゲノムの攪乱の予防という新たなコンセプトに基づくがん予防に発展する可能性がある。
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