2012 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍特異的なmiRNA成熟過程阻害を誘導するRNA結合タンパク質の探索
Project/Area Number |
23501264
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安田 純 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (00281684)
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Keywords | マイクロRNA / 発がん / RNA結合タンパク質 |
Research Abstract |
生後6日、30日の正常小脳および、Ptc1ヘテロ接合体マウスで発症した髄芽腫の全RNAを用い、対照を正常成熟小脳組織としてmiRNAのマイクロアレイによる発現プロファイル解析を行った。髄芽腫ではいわゆるMYCがん遺伝子の下流で、発癌を促進する機能を持つmiR-17-92クラスターに属するmiRNAの高発現を確認した。一方で正常小脳では高発現で、髄芽腫において発現が抑制されているmiRNAも多数同定された。これらの多くは神経系への細胞分化において重要とされるmiRNAであった。これらについてそのmicroprocessingの異常を検討するため、pre-miRNAおよびpri-miRNAの発現量について定量的RT-PCRによる検討を行ったところ、複数のmiRNAが髄芽腫組織で特異的に成熟過程が阻害されている可能性を見出した。 さらにmicroprocessingの調節にかかわる因子を同定するためにHeoらの方法に従い、そのうちの一つ(miR-124)のmiRNA前駆体に試験管内で結合するタンパク質を液体クロマトグラフィー・質量分析によって複数同定した(質量分析は北海道大学理学系研究院小布施教室のご協力を頂いた)。そのうちの一つEbp1タンパク質に着目し、同タンパク質が試験管内でmiR-124ヘアピン前駆体に特異的に結合すること、同タンパク質の抑制がmiR-124の発現上昇を誘導すること、同タンパク質がマウス髄芽腫において周囲の正常組織に比して非常に高発現を示していることなどについて確認した。これらの成果について日本癌学会学術総会などにて報告している。さらに、同タンパク質に対する市販の抗体が病理組織の染色に有用であることを確認し、今後実際のヒト髄芽腫での発現等が検討可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
候補タンパク質Ebp1を既に同定し、その機能についても、miRNA前駆体のステム構造を認識することを明らかにした。また、同タンパク質に対する市販の抗体が病理組織の染色に有用であることを確認し、今後実際のヒト髄芽腫での発現等が検討可能となったことは髄芽腫での発がん過程でのEbp1の生物学的意義が検証可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
miRNA 前駆体結合タンパク質および標的miRNA の生理機能の解析として、マウスモデル髄芽腫において成熟阻害を受けているmiRNA の候補標的mRNAを培養細胞株においてsiRNA で抑制する。そこでさらに下流のmiRNA 標的の遺伝子発現の変化を解析する。これら正常組織で発現抑制を受けているmiRNA 標的mRNA が、腫瘍発症抑制に対して何らか貢献している可能性について細胞生物学的解析を実施する。さらに同定されたmiRNA 成熟抑制タンパク質をコードする遺伝子、及びゲノム上に存在する同遺伝子のパラログについて対応するヒト腫瘍株などで遺伝子変異などゲノム異常があるか否かを分子遺伝学的に解析する。同定されたmiRNA 成熟阻害タンパク質をコードする遺伝子のさらなる機能解析を進めるため、各種の細胞生物学的解析を実施する。 miRNA 前駆体結合タンパク質の配列特異性の解析のため、マウス髄芽腫細胞に候補タンパク質を強制発現させ、結合するRNA を抽出後、塩基配列を決定し配列特異性を検討する。最終的にはmiRNA 前駆体のタンパク質結合配列のみを細胞に導入し、RNA 成熟過程抑制の阻害が可能か否かを検討する。 miRNA 前駆体結合タンパク質のヒト髄芽腫での発現変化の検討を実施する。同定された候補タンパク質について必要に応じて特異的に認識する抗体を作成・入手し、実際のヒト髄芽腫の病理組織学的標本に対して免疫組織化学染色を実施し、その発現量が生命予後や組織型などとの相関の有無を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主としてマイクロアレイによる発現解析やmiRNAの定量、前駆体のタンパク質結合への特異性を細胞生物学的、分子生物学的解析から明らかとする。さらにヒト髄芽腫組織での候補タンパク質の発現等も検討する。
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