2012 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍細胞の休眠化機構を特徴づけるマイクロRNAの同定と機能解析
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23501268
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
下野 洋平 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90594630)
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Keywords | 乳がん / 休眠がん細胞 / 細胞表面タンパク質 / マイクロRNA |
Research Abstract |
本研究は、ヒトの乳がん組織をより正確に反映するモデルとしてヒト乳がん異種移植マウスを作成し、その原発巣および転移巣から休眠状態にあるがん細胞を分離し解析することで、がん細胞の休眠に関わる分子機構を明らかにすることを目指している。これらの目的を達成するために、本年度は下記の実験を遂行した。 1. ヒト乳がん異種移植マウスの樹立:ヒト乳がん異種移植マウスを作成するために、同意の得られた乳がん患者の手術検体を70症例以上収集し、マウスの乳腺領域に移植した。 2. ヒト乳がん異種移植マウスにおける転移巣の検索:樹立された異種移植マウスの転移巣を組織染色やセルソーターにより解析することで、転移巣における転移がん細胞を分離同定した。 3. 休眠状態がん細胞の細胞周期の解析:Hoechst 3342やPyronyn Yなどの染色および細胞周期に関わるタンパク質の発現を指標に、がん組織中の休眠状態がん細胞を分離しその細胞周期を解析する方法を確立した。 4. セルソーターで分離したヒト乳がん異種移植マウスのがん細胞の遺伝子発現を解析して、がん細胞の休眠状態と関連する細胞表面タンパク質の候補を同定し、細胞周期との関連を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神戸大学医学部附属病院の協力により、70症例以上のヒト乳がん手術検体を収集し、免疫不全マウスに移植することができた。また、セルソーターを用いて、転移巣からがん細胞を分離し、その細胞周期などを解析することが技術的に可能になった。さらに、腫瘍組織のがん細胞の休眠状態を特徴づける細胞表面タンパク質の候補を同定し、細胞周期との関連を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト乳がん異種移植マウスを用いてがん細胞の休眠状態を特徴づける分子機構を解析するため、これまでの解析を踏まえたうえで、原発巣における単細胞レベルでの遺伝子発現解析を先行して行うよう計画を変更した。この計画変更に伴い生じた次年度使用額は、転移巣における細胞表面タンパク質の発現の検討、原発巣と転移巣における細胞周期制御に関わる遺伝子および細胞表面タンパク質の発現の検討と、マイクロRNA発現プロファイルの解析に使用する。さらに、同定された遺伝子を制御するマイクロRNAの解析と、マイクロRNA発現による細胞周期への影響の評価を、培養細胞およびヒト乳がん異種移植マウスを用いて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述した研究実績を踏まえ、平成25年度は、休眠状態がん細胞を特徴づける細胞表面タンパク質の同定およびがん細胞の休眠状態を特徴づける細胞表面タンパク質のマイクロRNAによる制御機構の同定を進める。 1. がん細胞の休眠状態と関連する細胞表面タンパク質の同定:樹立されたヒト乳がん異種移植マウスの原発巣および転移巣より分離した細胞における細胞周期制御に関わる遺伝子の発現量と細胞表面タンパク質の発現量の比較検討を通じて、がん細胞の休眠状態と関連する細胞表面タンパク質の同定を行う。 2. 休眠状態を特徴づける細胞表面タンパク質のマイクロRNAによる制御機構の解析:ルシフェラーゼアッセイ法などを用いて、細胞表面タンパク質の発現がマイクロRNAにより制御される仕組みの解析を行う。 3. マイクロRNA発現による細胞周期制御能の解析:細胞表面タンパク質の発現を制御するマイクロRNAの発現がヒト乳がん細胞の細胞周期に及ぼす影響を、培養細胞およびヒト乳がん異種移植マウスを用いて行う。
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