2012 Fiscal Year Research-status Report
ルテランによるがん細胞の接着および運動促進メカニズムの解明
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23501270
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
吉川 大和 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20274227)
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Keywords | ラミニン / インテグリン / ルテラン / 免疫グロブリンスーパーファミリー / 細胞接着 / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
ルテランは免疫グロブリンスーパーファミリーの 1 つであり、基底膜の主要な分子であるラミニンα5 鎖の特異的な受容体である。ルテランとラミニンα5 鎖の発現パターンから、その結合はがん細胞の接着および運動促進に関与することが示唆されている。これまで細胞運動の測定にはボイデンチャンバー、スクラッチアッセイなどが用いられてきたが、キーエンス BZ-8000 顕微鏡および TOKAIHIT の顕微鏡用培養装置を用いて細胞の動画を撮影し、ImageJ のプラグインを用いて細胞運動を詳細に解析できるようになった。これを利用し、ラミニンα5 鎖を含む組換えラミニンが有意に A549 細胞の運動を促進することを明らかにした。また、ルテランの発現は癌化によって上昇する。優位なルテランの発現量がラミニンα5 鎖に対する細胞接着および運動に与える影響を明らかにするため、テトラサイクリンの誘導発現系によりルテランの発現を誘導することができる HT1080 細胞を作製した。そして、これまでに阻害活性をもつ抗ルテラン抗体のエピトープ形成に必要なアミノ酸のひとつを同定することができている。エピトープの形成には複数のアミノ酸が要求されているので、残りのアミノ酸についても同定を試みている。この他の成果として、これまでに難しかったラミニンα5鎖の N 末端領域の組換え蛋白の作製に成功した。これによりα5鎖の N 末端領域に局在する PC12細胞の神経突起伸長に関与するドメインを明らかにすることができた。さらに、このドメインを網羅する12-14残基の合成ペプチドライブラリーを作製し、PC12細胞の神経突起伸長に関与するアミノ酸配列を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 24 年度は、(1) 阻害抗体によるラミニンα5 鎖への細胞接着および運動におけるルテランの役割の解明および、(2) エピトープマッピングによるラミニンα5 鎖の結合部位の同定、(3) ルテランの発現量がラミニンα5 鎖に対する細胞接着および運動に与える影響の解明を目的として研究を遂行した。(1) は、ラミニンα5 鎖を含む組換えラミニンの調製を行いながら、細胞接着および細胞運動実験などの実験をおこなった。これまでに、キーエンス BZ-8000 顕微鏡および TOKAIHIT の顕微鏡用培養装置を用いて細胞の動画を撮影できるようになっている。本年度は細胞運動の動画を、ImageJ の Plugins である Manual tracking、Chemotaxis Tool で解析し、ラミニンα5 鎖を含む組換えラミニンが有意に A549 細胞の運動を促進することを明らかにした。(2) これまでに、阻害活性をもつ抗ルテラン抗体のエピトープ形成に必要なアミノ酸のひとつを同定することができている。エピトープの形成には複数のアミノ酸が要求されているので、残りのアミノ酸についても同定を試みている。の形成には複数のアミノ酸が要求されているが残りのアミノ酸についてはまだ同定できていない。(3) 優位なルテランの発現量がラミニンα5 鎖に対する細胞接着および運動に与える影響を明らかにするため、テトラサイクリンの誘導発現系によりルテランの発現を誘導することができる HT1080 細胞を作製した。このほか研究概要にも記載したように、これまでに難しかったラミニンα5鎖の N 末端領域の組換え蛋白の作製に成功した。これによりラミニンα5鎖の N 末端領域に局在する神経突起伸長に関与するアミノ酸配列を同定する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、ラミニンα5 鎖への細胞接着および運動におけるルテランの役割の解明を中心におこなう。これまでの研究により、ラミニンα5 鎖によって運動が促進される肺癌由来の A549 細胞を使用して細胞接着および運動アッセイを行ない、ラミニンα5 鎖による運動におけるルテランの関与の割合を明らかにする。さらに、の発現をテトラサイクリンの誘導発現系により誘導し、優位なルテランの発現量がラミニンα5 鎖に対する細胞接着および運動に与える影響を明らかにする。ルテランの結合を阻害する抗体のエピトープマッピングは引き続きおこない、残りのアミノ酸を同定する。それから、連携研究者・札幌医科大学 三高俊広教授との共同研究により、シェディングされたルテランを肝細胞癌患者血漿中に検出した。本研究では、独自に作製したルテラン抗体および可溶化型ルテランをスタンダードとして用い、シェディングされたルテランを定量化するサンドイッチ ELISA 法を開発する。肝細胞癌患者の血漿は、札幌医科大学の規定に沿って採取され、病理診断の付された術前・術後の血漿を用いる。例数を増やして、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしての有用性を明らかにする。また、細胞接着および運動アッセイにおいて、細胞とともに可溶化型ルテランを添加し、ラミニンα5 鎖への接着および運動におけるシェディングされたルテランの役割を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成 24 年度は、論文投稿時に英文の校正を要求されなかったので謝金の使用がなかった。年度をまたぐ投稿中の論文の別刷り費用のため、繰越金が生じている。平成 24 年度は、繰越金を含めたその他により、論文投稿費用として使用する。物品費は、細胞培養用の培地および添加剤、ピペット、フラスコ、抗体などの購入に使用する。人件費・謝金は、英文の校正などに使用する。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Absence of post-phosphoryl modification in dystroglycanopathy mouse models and wild-type tissues expressing non-laminin binding form of alpha-dystroglycan2012
Author(s)
Kuga A, Kanagawa M, Sudo A, Chan YM, Tajiri M, Manya H, Kikkawa Y, Nomizu M, Kobayashi K, Endo T, Lu QL, Wada Y, Toda T
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 287
Pages: 9560-9567
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] 基底膜2012
Author(s)
吉川大和
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Journal Title
脳科学辞典 http://bsd.neuroinf.jp/wiki/基底膜 2012年
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
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