2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞分化系列の理解に基づく肺癌幹細胞の形成維持機構の解析
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23501281
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Research Institution | 愛知県がんセンター(研究所) |
Principal Investigator |
長田 啓隆 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 室長 (30204176)
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Keywords | 肺がん / がん幹細胞 |
Research Abstract |
昨年度は代表的Sphere細胞の遺伝子発現解析を行ったが、今年度は、Sphere細胞を更に2種類追加し、microarrayによる遺伝子発現profile解析を進めた。新たに検討したSphere細胞でもOct-4、Nanog、ALDH1等の幹細胞マーカーとされる分子の発現亢進が見られた。また、幹細胞で活性化するシグナルの一つであるNotchシグナルの活性化が示唆された。このような遺伝子発現profileから、新たに検討したSphere細胞もがん幹細胞の性質を持つことが示唆された。また、神経内分泌マーカーの発現亢進や、肺腺癌マーカーNkx2-1の発現低下も見られ、Sphere形成に伴い細胞分化系列のシフトが起こっていることが示唆された。 同時に蛋白をコードしないlincRNAの発現も検討した。検討した3種のSphere細胞では発現上昇するlincRNAが約800個見出され、この中のおよそ30%のlincRNAが、共通して発現上昇していることが判明した。また神経内分泌分化を誘導する転写因子ASH1によって発現制御されるlincRNA群を見出し、機能解析を進めているが、これらASH1により制御されるlincRNAの中でも、Sphere細胞で共通して発現亢進しているlincRNAが見出された。これらの結果からSphere細胞の形成・維持にlincRNAが関与する可能性が示唆された。 またASH1のTet発現誘導ベクターを、肺癌細胞株5種・正常気道上皮由来細胞株2種に導入してSphere形成を行い、ASH1シグナルとSphere形成能との関連を検討した。その結果、2種類の細胞株でSphere形成が促進され、1種類の細胞株では抑制が見られた。残り4種類では著明な差異は見られなかった。部分的にではあるが、神経内分泌分化とSphere形成能との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、蓄積したSphere細胞を追加して用い、Sphere細胞の遺伝子発現解析を更に進めた。新たなSphere細胞でも幹細胞様の遺伝子発現が見られ、またSphere形成に伴い細胞分化系列のシフトが起こっていることが示唆された。同時にこれらの解析から幹細胞マーカーとして有用なマーカーも示唆されている。またがん幹細胞形成にlincRNAが関与する可能性も示唆された。ASH1のTet誘導ベクターを用いたSphere形成への影響も更に検討を進めた。またがん幹細胞との比較のために、正常気道上皮由来細胞株からSphere細胞も作成した。これらはすべて当初の予定通りであり、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ASH1のTet発現誘導ベクター導入によりSphere形成が促進される細胞株が、当初の予想よりも少なく、次年度に使用する研究費が生じた。 今後は、今までの研究で遺伝子発現からがん幹細胞様特性を持つと考えられたSphere細胞に関して、造腫瘍能・細胞マーカー等の解析を進める。また現在得られている、ASH1のTet誘導ベクターを導入したSphere細胞で、ASH1の発現誘導On・Off間で比較して遺伝子発現解析を行い、ASH1シグナルのSphere形成への関与を詳細に検討していく。更に比較のために正常気道上皮由来細胞株のSphere細胞も遺伝子発現等を検討していく。またSphere細胞で発現亢進しているlincRNAの機能を、ASH1に制御されるlincRNAを中心に解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Sphere細胞の造腫瘍能の解析を進めるために、免疫不全マウスを購入する。またASH1のTet誘導ベクターを導入したSphere細胞や正常気道上皮由来細胞株のSphere細胞の遺伝子発現解析のために、microarray解析試薬・定量PCR解析試薬等を購入する。また、がん幹細胞形成・維持に関わるシグナル分子の探索のために、Sphere細胞で発現する分子に対するsiRNA・各種阻害剤・抗体等を購入する。更にlincRNAの機能を解析するために、RNA合成試薬やRNA結合蛋白解析試薬等を購入する。 予想以上にlincRNA解析の必要性が高いことが判明したので、次年度に使用する予定の研究費をlincRNAの解析に充てる。
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