2011 Fiscal Year Research-status Report
消化器癌患者におけるT細胞機能低下メカニズムの検討とその制御による免疫治療の開発
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23501285
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
齊藤 博昭 鳥取大学, 医学部, 講師 (20335532)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫治療 / 消化器癌 / T細胞 / Tim-3 / LAG-3 |
Research Abstract |
まず、胃癌患者30名と健常成人15名を対象に末梢血、癌組織、非癌部組織のリンパ球(CD4およびCD8Tリンパ球やNK細胞)のTim-3およびPD-1発現をFACSにて検討した。末梢血では健常成人と比較して胃癌患者においてCD4およびCD8Tリンパ球のPD-1発現の有意な上昇が確認された。一方でTim-3発現においてはCD8Tリンパ球で胃癌患者において健常成人と比較して有意な上昇が確認されたが、CD4Tリンパ球においては差が認めなかった。NK細胞ではTim-3およびPD-1発現ともに健常人と胃癌患者との間で差が認められなかった。CD4およびCD8Tリンパ球共に癌部において非癌部や末梢血と比較してPD-1の有意な発現上昇が確認された。さらにCD8Tリンパ球においては癌部において非癌部や末梢血と比較してTim-3の有意な発現上昇が確認された。 次に、PD-1やTim-3発現がリンパ球の機能にどのような影響を及ぼすかを検討することを目的に、CD4およびCD8Tリンパ球においてIFNγ産生能を細胞内染色にて解析した。その結果、CD4およびCD8Tリンパ球ともにIFNγ産生能はPD-1およびTim-3発現陰性、PD-1あるいはTim-3の一方が発現陽性、PD-1およびTim-3ともに発現陽性の順に有意に低下していた。 術後1ヶ月目にリンパ球のTim-3およびPD-1発現を解析して術前後の発現変化を検討したところ、CD4およびCD8Tリンパ球共にPD-1の有意な発現低下が認められた。一方でCD8Tリンパ球のTim-3発現においても低下が認められたが現時点では有意差は認められなかった。 以上の結果から、胃癌患者におけるリンパ球の機能低下にはPD-1およびTim-3発現が密接に関与していることが初めて明らかとなり、これらをターゲットとした免疫治療の可能性を示す結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成23年度に消化器癌患者におけるリンパ球の機能低下に関係するメカニズム(特にリンパ球表面に発現する免疫レセプターの関与)を明らかにする予定であった。今年度の検討から胃癌患者において末梢血や癌組織においてリンパ球のPD-1およびTim-3発現が有意に上昇し、これが機能低下に密接に関与することが証明できた。今後はこれらの結果をもとに有効な免疫治療の開発につながるような検討を予定しており、当初の予定どうり、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果をもとに、PD-1発現およびTim-3発現をもとにセルソーターにて細胞分離を行い、それぞれのサブタイプのリンパ球のさらなる詳細な機能解析を行う予定である。(解析予定項目)(1)CCR7, CD45RA, CD45ROなどを解析し、各サブセットのリンパ球がどの分画に属するかを検討する。(2)サイトカイン(IL-2, IL10, IFN-γ, TGF-β, TNF-α)産生能をELISAにて測定する。(3)細胞障害活性に関係する分子であるグランザイムBやパーフォリンの発現をFACSにて検討する。(4)増殖活性をMLRやCSFEにて測定する。(5)転写因子であるT-bet(Th1の発達に関与)やGATA-3(Th2の発達に関与)の発現をRT-PCRにて解析する。(6)NK細胞の機能評価としてK562細胞に対する細胞障害活性をCrリリースアッセイにて測定する。(7)CTLへの分化能の比較:末梢血より分離した単球をGM-CSFとIL-4を用いて培養し5日目にLPSで刺激して成熟樹状細胞を得る。これにCEAペプチドをのせ、上記各サブセットのCD8Tリンパ球を1週間に1度ずつ、計3回刺激してCEA特異的CTLの誘導能を比較する。CTLの評価はテトラマー染色、ELISPOTアッセイ、Crリリースアッセイにて行う。(8)マイクロアレイを用いて各サブセットの網羅的遺伝子解析を行い、遺伝子レベルでの違いを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記実験を行うために、各種抗体、サイトカイン、プライマー、ELISAキット、各種試薬などを購入する目的に使用する予定である。また、得られた結果を学会発表するための旅費としても使用予定である。また、次年度使用額(188,856円)が生じているが、これはPD-1やTim-3に加えて、もともとLAG-3を解析予定であったが、使用できる抗体の関係で解析が出来なかったためである。この実験に関してはH24年度に上記の実験と平行して行う予定である。
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