2011 Fiscal Year Research-status Report
再生医学的手法を取り入れた新しいがん免疫細胞療法の開発
Project/Area Number |
23501291
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 はるか 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (70392181)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 細胞リプログラミング / iPS細胞 / 分化誘導 / T細胞 / 腫瘍免疫療法 / 再生医学的手法 |
Research Abstract |
集学的治療法の進歩により、がんの治療成績は確実に向上している。しかしながら、さまざまな手を尽くしても治療が困難となってしまうがん難民もいまだ数多く存在し、新たな視点からの画期的ながん治療法の開発が待ち望まれている。申請者は、近年開発された細胞リプログラミング技術という再生医学的手法を従来の腫瘍免疫療法に取り入れることで、新しく魅力的な新規腫瘍免疫療法を開発できると考えた。本研究ではその有効性をマウスモデルで検証し、次世代腫瘍免疫療法の開発に繋げる。 <当該年度の研究の成果>1.iPS細胞由来T細胞の抗腫瘍効果の検討(DLIマウスモデルの検討) 線維芽細胞由来iPS細胞をT細胞へ分化誘導し、生成したT細胞を骨髄移植後白血病再発マウスモデルにDLI治療細胞として1回、あるいは2回移入(治療)した。無治療群では、全てのマウスが30日以内に死亡するのに対し、治療群では、治療回数依存的に有意に延命効果が認められることがわかった。 2.OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製 レンチウイルスによりOT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製を実施した。OT-1α/β遺伝子がiPS細胞に導入されていることは、ゲノムPCRにより確認した。OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞をin vitroでT細胞へと分化誘導すると、T細胞は生成したものの、生成した細胞においてOT-1α/βの発現はみられなかった。ES細胞やiPS細胞では、外来遺伝子がサイレンシングされる現象が知られている。今回使用したレンチウイルスベクターはCMVプロモーターを有するが、現在他のプロモーター駆動性にOT-1α/β遺伝子を発現するベクターを使用しての検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.iPS細胞由来T細胞の抗腫瘍効果の検討(DLIマウスモデルの検討)DLIマウスモデルにおけるiPS細胞由来T細胞の抗腫瘍効果について検討を行っており、研究はおおむね順調に進展している。2.OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製について、問題点を発見してその改善法を検討中である。問題点は改善可能な見込みであり、よって研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.iPS細胞由来T細胞の抗腫瘍効果発現の機序検討(DLIマウスモデルの検討) DLIマウスモデルにおいて、iPS細胞由来T細胞は抗腫瘍効果を発揮することを確認したが、どのような機序により抗腫瘍効果がもたらされたのかを更に解析する予定である。2.OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製とT細胞への分化誘導 改良型ベクターを用いてのOT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製を行う。OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞が得られ次第、T系列細胞へと分化誘導し、生成したT細胞の細胞表面抗原の発現をフローサイトメーターにて解析する。特にT細胞受容体の発現に関しては、マウスMHC class 1/OVAテトラマー等を用いて詳細に解析する。また、RT-PCR法、リアルタイムPCR法などにより発現分子の詳細な解析を行い、OT-1-iPS細胞由来T系列細胞の特性を明らかにしてゆく。以上のような機能解析を行うことによりその性状を明らかにする。 OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞より分化誘導したT系列細胞の機能について、EG.7細胞(OT-1α/βT細胞受容体に反応性のOVA発現性胸腺腫)に対する反応性をサイトカイン産生や細胞傷害活性といった指標でin vitroで解析する。また、OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞由来T細胞の、OT-1抗原発現腫瘍に対する抗腫瘍効果の検討等(担がんマウスモデルへの適用)を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のとおり、OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞をin vitroでT細胞へと分化誘導すると、T細胞は生成したものの、生成した細胞においてOT-1α/βの発現はみられなかったため、その後の実験に進めることができず、分化誘導実験が予定数より下回った。それゆえ、分化誘導に使用する試薬を予定より少量しか使用せず、未使用額が発生した。この分化誘導実験は、24年度に再び行う予定であり、分化誘導実験に使用する試薬類の購入をこの未使用額にて充当させる予定である。平成24年度は上記の他、引き続きDLI治療実験、OT-1α/β遺伝子導入iPS細胞の作製および分化誘導、性状解析等の実験を行うため、細胞培養用試薬(血清、培地、各種サイトカイン)、解析用試薬(各種抗体)、マウスの購入費用に研究費を使用する。また、研究成果を日本免疫学会等で発表するため、研究発表費、旅費等として研究費を使用する予定である。
|