2012 Fiscal Year Research-status Report
代謝物プロファイリングによる膵臓がん早期診断システムの開発
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23501296
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
波多野 直哉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), グローバルCOE研究員 (10332280)
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Keywords | メタボロミクス / プロテオミクス / がん |
Research Abstract |
がんは日本人の死亡原因の第1位であり、この予防には早期発見が重要である。国内には優れた画像検査技術があるが、これを一般的な健康診断と同様に実施することは、人材面・コスト面を考えると現実的ではない。よって、より簡便で安価なスクリーニング法を開発する必要がある。そこで、がんの早期スクリーニング法として、がん患者特有の血中代謝物のプロファイルを参照する「代謝物プロファイリング」による診断を考えた。 がん患者に特徴的な代謝物プロファイルを取得するため、質量分析計を用いたヒト血清メタボロミクスの解析システムの確立し、これまでに膵臓がんをはじめとする様々ながんで変動する代謝物群を同定した。しかし、この代謝物プロファイルに違いが起こるメカニズムは不明である。この違いの原因を明らかにするため、代謝に関わる酵素群についても網羅的に比較定量するプロテオミクスの系を確立した。 具体的には、比較するサンプルのうち片方に、安定同位体ラベルしたアミノ酸を取り込ませる。その後、比較するサンプル由来のタンパク質を等量混合し、質量分析計で比較して、タンパク質量の比較定量を行う。その結果、モデルとしてヒト乳がんの培養細胞を用いたところ、安定的に100種類以上の代謝酵素のタンパク質量の測定が可能となった。これには、代謝の主要経路であるペントースリン酸回路、解糖系、TCA回路に関わる重要な酵素が含まれている。これにより、様々ながん種の培養細胞を用いることにより、代謝物プロファイルの違いの原因を明らかにする系を確立した。 この解析法を用いて、細胞増殖時と、抗がん活性を有するPI3K阻害剤を用いた細胞増殖抑制時に、相反する挙動を示す酵素(脂肪酸合成酵素(FASN)、乳酸脱水素酵素(LDHA)、ATP-クエン酸リアーゼ(ACLY))が判明した。これは抗がん剤の効果や患者に対する治療効果の判定に応用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに膵臓がんをはじめとする様々ながんで変動する代謝物群を同定した。しかし、この代謝物プロファイルに違いが起こるメカニズムは不明であった。 今年度の研究目的であった、質量分析計を利用しての細胞内代謝酵素の網羅的定量解析のプロトコールが確立できた。これにより、主要な代謝経路であるペントースリン酸回路・解糖系・TCA回路に関わる重要な酵素の比較定量が可能となった。当初の計画通り、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、がん患者群と健常者群のグルーピングに寄与する代謝物(がん患者群と健常者群で差がある血中代謝物)を、統計解析の一つの方法である多変量解析によって同定してきた。この違いがどの代謝酵素群によって引き起こされるのか調べるため、代謝酵素のタンパク質量を網羅的に比較する系を確立し、がん化により量が増える代謝酵素を同定した。 代謝の活性化には、酵素量の増減も重要であることには違いないが、今後はさらに一歩踏み込んで、酵素活性が変動する翻訳後修飾の違いの検出に取り組む予定である。そこで、来年度の研究目的としては、代謝酵素の活性に関わる翻訳後修飾(リン酸化、アセチル化など)を検出する系を質量分析計を用いて確立し、がん化に関わる代謝酵素の翻訳後修飾を調べることとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究に必要となった特殊な試薬(安定同位体ラベルしたアミノ酸)について、納品に時間がかかり、年度内の納入が間に合わなかったために、研究費を次年度に繰り越すことにした。 次年度の研究費の使用計画としては、実験に必要な試薬・消耗品の購入費用の他に、研究成果発表・情報収集に関わる旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Serum metabolomics as a novel diagnostic approach for gastrointenstinal cancer.2012
Author(s)
Ikeda A, Nishiumi S, Shinohara M, Yoshie T, Hatano N, Okuno T, Bamba T, Fukusaki E, Takenawa T, Azuma T, Yoshida M.
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Journal Title
Biomedical Chromatography
Volume: 26(5)
Pages: 548-558
DOI
Peer Reviewed
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