2013 Fiscal Year Annual Research Report
代謝物プロファイリングによる膵臓がん早期診断システムの開発
Project/Area Number |
23501296
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
波多野 直哉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命助教 (10332280)
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Keywords | メタボロミクス / プロテオミクス / がん |
Research Abstract |
がんは日本人の死亡原因の第1位であり、予防には早期発見が重要である。国内には優れた画像検査技術があるが、これを一般的な健康診断と同様に実施することは、コストを考えると現実的ではない。よって、より簡便で安価ながんの早期スクリーニング法として、がん患者特有の血中代謝物のプロファイルを参照する「代謝物プロファイリング」による診断を考えた。 がん患者に特徴的な代謝物プロファイルを取得するため、質量分析計を用いたヒト血清メタボロミクス(代謝物の網羅的)解析システムを確立し、これまで膵臓がんをはじめとする様々ながんで変動する代謝物群を同定した。しかし、この代謝物プロファイルに違いが生ずるメカニズムは不明である。この違いの原因を明らかにするため、代謝に関わる酵素群についても網羅的に比較定量するプロテオミクスの系と共に、酵素の活性化に関わるリン酸化・アセチル化などのタンパク質の翻訳後修飾を比較・決定する系を確立した。 具体的には、抗がん剤の候補とされている薬剤を培養細胞に投与し、増殖抑制を起こした細胞を比較対象として用意した。リン酸化・アセチル化などの翻訳後修飾を認識する抗体を用いてウエスタンブロットを行い、比較するサンプルで大きく違いのあるタンパク質を同定した。これには、ブロットしたメンブレンから直接タンパク質を溶出し、プロテアーゼ処理後、質量分析計でタンパク質を同定する方法を用いた。 実際にこの解析法を、ヒト乳がん由来の細胞に、抗がん活性を有する試薬を投与したサンプルに用いたところ、翻訳後修飾に違いが生じるタンパク質(Elongation Factor 2(EF2)、60kDa Heat shock protein)が判明した。EF2に関しては、さらにこのタンパク質の翻訳後修飾部位に特異的な抗体で確認を行った。この結果、様々な組織由来のがん培養細胞を用いることで、がん種ごとの代謝物プロファイルの違いの原因を明らかにできると考えられる。
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Research Products
(2 results)