2011 Fiscal Year Research-status Report
神経内分泌腫瘍の系統的統合的解析-疾患概念の整理と診断基準確立
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23501301
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
元井 紀子 公益財団法人がん研究会, がん研究所病理部, 研究員 (70292878)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経内分泌癌 / 神経内分泌腫瘍 / 病理診断 |
Research Abstract |
神経内分泌癌(NEC)は、肺、消化管に多く発生するが、全身諸臓器に発生し、肺では喫煙者で多いことが知られている。 本研究は、全身諸臓器に発生するNECについて、肺と他臓器との相違点を明らかにする目的で、臨床病理学的背景、免疫染色による蛋白発現プロファイルを解析した。 対象と方法:がん研で収集されたNECについて、発生年齢、性別、喫煙歴の有無、病理診断名などを検索した。腫瘍組織のFFPE検体を用いて、肺のNECで組織型により発現の異なる蛋白(神経内分泌分化マーカー、細胞分化マーカー、細胞増殖能マーカーなど)について免疫染色、ISHで発現を検討した。 結果:NEC症例256例を収集した。原発巣の内訳は、肺96、上部消化管31、下部消化管51、膵臓12、胆嚢2、頭頸部27、子宮頸部25、子宮体部5、卵巣3、膀胱7である。年齢の平均は60歳、胃、直腸、婦人科臓器では若年発生、肺、食道、胆嚢では高齢者発生の傾向があった。男性にやや多い傾向があった。喫煙指数は、臓器により差があり、肺、食道、下部消化管、頭頸部、膀胱では高いが、その他では比較的低い傾向があった。NECの診断名は多彩であった。免疫染色の結果、小細胞癌のなかには、臓器により神経内分泌分化、細胞分化マーカーの発現の程度や増殖能が異なっていた。TTF1は肺発生症例で発現が認められたが、他臓器NECで発現があることは例外的であった。肺NECにおいて、ASCL1の遺伝子発現をISHで検討したところ、タンパク発現と関連する傾向があった。 考察:NECの臨床背景には、臓器のより喫煙と関連の強いものと、弱いものがあった。NECには種々の病理組織像のものが含まれ、悪性度も様々であった。NECは、同じ診断名でも臓器により臨床背景や腫瘍細胞形質が異なるものが存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NECの臨床背景、病理組織像のものが含まれ、悪性度も様々であった。NECは、同じ診断名でも臓器により臨床背景や腫瘍細胞形質が異なるものが存在することを臨床病理学的に明らかにした。 現在までに、過去の症例256例の収集を行った。目標症例数には不足している臓器はあるが、概ね収集できた。さらに詳細な予後調査を含む情報の収集を行う必要がある。 タンパク発現に関しては、神経内分泌分化マーカーの一般的な対象と、臓器特異マーカーの一部について検索を行った。今後は、神経内分泌分化マーカーの対象を広げるとともに、近年注目されている新規の臓器特異マーカーの発現を検索する。 遺伝子発現解析は、FFPEを用いたISHによる条件設定を行った。肺での検索に加え、他臓器での発現について検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
症例数の不足している臓器での症例の再検討による収集と、臨床予後、治療反応性と関連するマーカーの発現に注目して検索を進める。 収集症例数に関して、一部の臓器、泌尿器系などでは症例数が期待されたものより少なく、従来の診断基準の違いと思われた。これらの臓器については、再検討をすることで症例数を増やす方向で研究を進めたい。 免疫染色で、神経内分泌マーカーの候補分子(N cadherin)や、近年報告されている比較的新しい臓器特異的マーカー(PAX3,8, CDX2など)を検索対象に加え、臓器による相違について、さらに検索する。 ASCL1のISHの基本条件を設定したため、肺以外のNECで症例数を増やして発現の程度、局在の検索を進める。他の分化マーカーについても、ISHで検索を推進する。 タンパク発現と遺伝子発現の関連、組織像との関連について検討する。 臨床予後の収集を行い、マーカー発現との関連を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.多数症例の検索を効率的に推進するために、TMAを作製する。2.この検体を用いて、免疫染色によるタンパク発現およびISHによる遺伝子発現解析とその局在について、検索を進める。3.臨床予後情報の収集を進める。4.生物学的悪性度に基づく、診断基準の見直しを行い、その指標となるマーカーの抽出を進める。
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Research Products
(11 results)