2011 Fiscal Year Research-status Report
白血病細胞の機能薬理に基づく抗腫瘍薬耐性の克服とテーラーメイド化学療法の確立
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23501307
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山内 高弘 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (90291377)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 白血病 / 機能薬理 / 抗がん薬 / 耐性 / テーラーメイド医療 |
Research Abstract |
従来のkey drugシタラビンと代謝経路が異なる新薬、クロファラビンの薬剤耐性機序を細胞機能としての薬物代謝特性の面から解析し、シタラビンとの相違に基づきクロファラビンによる化学療法の個別化を目指した。 交付申請書研究計画に基づき、平成23年度はクロファラビン耐性培養白血病細胞株の樹立と耐性機序の解明を行った。培養白血病細胞HL-60でクロファラビン耐性亜株を樹立し、細胞内クロファラビン3リン酸、クロファラビン代謝に関わる各因子、DNA内薬剤転入、アポトーシスの点から耐性機序を解明した。 20倍クロファラビン耐性HL-60亜株を樹立した。クロファラビン殺細胞効果の要である細胞内クロファラビン3リン酸生成を予備実験として確立した高感度HPLC法により測定した。耐性細胞で、細胞内活性体クロファラビン3リン酸生成量は50%まで低下し耐性機序の重要な一つと考えられた。クロファラビン3リン酸生成には細胞機能として細胞膜トランスポーター、細胞内リン酸化酵素、不活化酵素、が関連する。リアルタイムRT-PCR法でトランスポーター3種類のmRNA発現レベルを定量し耐性細胞においていずれも低下していた。Western blot法により細胞内リン酸化酵素(細胞質deoxycytidine kinaseタンパクdCK、ミトコンドリア内deoxyguanosine kinaseタンパクdGK)は低下していた。特にdeoxyguanosine kinaseの低下はいままで報告されていない新知見であった。不活化酵素タンパクについては親株と耐性亜株間に差は見られなかった。クロファラビン3リン酸は核DNA内に転入されDNA鎖伸長の阻害することで殺細胞効果を発揮する。放射性同位元素標識法で耐性細胞では核DNA内薬剤量は減少し、フローサイトメトリー法でクロファラビンによるアポトーシス死は親株より低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書平成23年度計画に記載されている点について、クロファラビン耐性培養白血病細胞株の樹立と耐性機序の解明を行った。0)まずクロファラビン耐性細胞の樹立に成功した。そして耐性細胞亜株について耐性機序特異的な細胞機能を評価した。1)細胞内クロファラビン3リン酸の測定:上述のごとく、測定結果が得られた。2)クロファラビン代謝に関わる各因子の同定:上述のごとく、細胞膜表面のトランスポーターのmRNA発現レベル定量、リン酸化酵素タンパク(dCK, dGK)の発現定量、不活化酵素のmRNA発現レベル定量について全て検討した。3)DNA内薬剤転入と修復・アポトーシス経路;上述のごとく、放射性同位元素ラベルクロファラビンを用いて核DNA内転入薬剤量を定量した。さらにフローサイトメトリー法でクロファラビンによるアネキシン陽性率について評価した。4)交付申請書に予定され検討できなかった残された課題として:(1)修復機転としてチェックポイント機構などの修復反応、(2)細胞死に直接関連するアポトーシス関連タンパクレベルについて時間的に検討できなかった。これについては平成24年度以降に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において白血病のテーラーメイド化学療法確立のために白血病細胞の細胞機能に基づいた薬物代謝特性(機能薬理)から耐性克服を試みる。そのモデルとして、新薬、クロファラビンの薬剤耐性機序を細胞機能としての薬物代謝特性の面から解析し、クロファラビンによるシタラビン耐性克服に基づいた化学療法の個別化を目指した。研究計画書に基づき、平成24年度以降では、計画書の予定通り、シタラビン耐性白血病細胞亜株におけるクロファラビンによる耐性克服を試みる。我々の教室で既にシタラビン耐性亜株を樹立しておりシタラビン耐性のメカニズムとして、リン酸化酵素dCKの低下、トランスポーターENT1の減少、不活化酵素の亢進、抗アポトーシスタンパクbcl-2の亢進、グルタチオン解毒機能亢進、多剤耐性くみ出しポンプの過剰発現などが見いだされている。これら耐性機序のいくつかは,異なる代謝経路を有するクロファラビンで克服ができると期待される。よって平成24年度以降では、シタラビン耐性亜株におけるクロファラビンの感受性とシタラビン耐性機序の関連を検討し、真にクロファラビンが克服しうる機序のシタラビン耐性を同定する。またクロファラビンの効果のsurrogate markerを同定し、耐性株における感受性に合致するかについて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度以降シタラビン耐性亜株において以下の実験が必要である。1,細胞内シタラビン3リン酸生成、クロファラビン3リン酸生成の定量:(HPLC法による測定、陰イオン交換カラム、リン酸緩衝液)2,シタラビン、クロファラビン併用時のリン酸化酵素タンパク量など活性経路の修飾効果の検討:(Western blot用deoxycytidine kinase、deoxyguanosine kinase抗体)3,シタラビン、クロファラビンの細胞核DNA内転入量の定量:(放射性同位元素標識シタラビンならびにクロファラビン)4,シタラビン、クロファラビンの殺細胞効果の検討:(XTT法による細胞培養増殖定量のための培養物品・器具、プラスチック器具、フローサイトメトリーのためのAnnexin V, PIなどの試薬)5,平成23年度予定の実験:(一部平成23年度予定の実験があり、Western blot法による細胞回転、アポトーシスに関連するタンパク定量のための各種抗体)
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