2012 Fiscal Year Research-status Report
白血病細胞の機能薬理に基づく抗腫瘍薬耐性の克服とテーラーメイド化学療法の確立
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23501307
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山内 高弘 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (90291377)
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Keywords | がん化学療法 / テーラーメイド化 / 機能薬理学 / 抗がん薬 |
Research Abstract |
造血器腫瘍治療の従来薬シタラビンと代謝経路の違う新薬クロファラビンの耐性機序を腫瘍細胞機能としての薬物代謝特性から解析した。研究計画書に基づき、平成23年度はクロファラビン耐性白血病細胞株を樹立し耐性機序を検討した。平成24年度では、23年度に引き続き耐性機序として、細胞回転、細胞死について検討し、後半はシタラビン耐性のクロファラビンによる克服について検討した。 HL-60細胞はクロファラビン感受性でありクロファラビンにより細胞回転はS期で止まりその後アポトーシスにより死滅した。形態的にミトコンドリア障害が認められ、Caspase 3, 9切断も生じ、ミトコンドリア経由アポトーシスであることが示唆された。クロファラビン耐性細胞ではクロファラビンによるアポトーシスは抑制され、形態的にミトコンドリア障害も認められなかった。耐性細胞で抗アポトーシスタンパクBcl2は増加し、プロアポトーシスBimが減少していた。耐性細胞にBcl2阻害薬ABT737とクロファラビンを併用しCombination index値から相乗効果が得られた。 シタラビン耐性白血病細胞亜株におけるクロファラビンによる耐性克服を検討した。HL-60細胞はシタラビンによる50%増殖阻止濃度は300 nM、シタラビン耐性亜株HL-60/ara-C20細胞のそれは6 μMであり20倍耐性であった。これに対してクロファラビンの50%増殖阻止濃度はそれぞれの細胞株に対して40 nM、300nMと8倍弱の耐性度にとどまった。 以上、クロファラビン耐性は細胞内活性体クロファラビン3リン酸生成能低下と抗アポトーシスによると判明した。クロファラビンはシタラビン耐性株に中等度感受性を有し、シタラビン耐性克服にクロファラビンの有効性を示したことは意義あり、難治性白血病のテーラーメイド化の一助となる重要な知見であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画書通り、平成23年度は①クロファラビン耐性白血病細胞株の樹立と耐性機序解明、平成24-25年度では②-1前記①の継続と、②-2従来薬シタラビン耐性のクロファラビンによる克服を目的とした。 平成24年度は②-1平成23年度の継続として研究計画書通り、耐性と細胞周期と細胞死の関連を検討した。HL-60細胞はクロファラビンによりS期で止まりアポトーシスで死滅した(フローサイトメーターによる定量)。形態的にミトコンドリア障害が認められ(NIRアッセイ)、Caspase 3, 9切断も生じ(Western)、ミトコンドリア経由アポトーシスであることを示した。クロファラビン耐性細胞ではアポトーシスは抑制され、ミトコンドリア障害も認められなかった。抗アポトーシスタンパクBcl2は増加し、プロアポトーシスBimが減少していた(Western)。Baxは変わらなかった。耐性細胞に対してBcl2阻害薬ABT737とクロファラビン併用によりCombination index値から相乗効果が認められた。以上研究計画の①、②-1について完了しさらに踏み込んでクロファラビン耐性克服にまで応用することができた。 ②-2シタラビン耐性白血病細胞亜株でクロファラビンによる耐性克服を検討した。HL-60細胞はシタラビンによる50%増殖阻止濃度は300 nM、我々が樹立したシタラビン耐性亜株HL-60/ara-C20細胞のそれは6 μMであり20倍シタラビン耐性であった。クロファラビンの50%増殖阻止濃度はそれぞれの株に対して40 nM、300 nMと8倍弱の耐性度にとどまった。細胞内活性体シタラビン3リン酸生成量はHL-60細胞に比べてHL-60/ara-C20は約1/10に減じていたが、クロファラビン3リン酸生成量は1/4にとどまった。 このように研究の進捗は予定通り以上と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書通り、平成25年度以降はシタラビン耐性白血病細胞亜株におけるクロファラビンによる耐性克服を検討する。我々の教室で所有するシタラビン耐性亜株におけるクロファラビンの感受性とシタラビン耐性機序との関連を検討し、真にクロファラビンが克服しうる機序のシタラビン耐性を同定する。そのためには細胞内転入での両薬剤の差異、クロファラビンの細胞内リン酸化能、細胞DNA内薬剤転入定量、アポトーシス誘導能としての両薬剤の差異を検討する。またクロファラビンのsurrogate markerがシタラビン耐性株における感受性に合致するかについて解析する。これについてはクロファラビン耐性細胞の検討からクロファラビンのsurrogate markerは細胞内クロファラビン3リン酸量と推測されることからシタラビン耐性と細胞内クロファラビン3リン酸生成の関連を追及する。 なお、計画どおりに進まない時、全く別の視点からクロファラビンの抗腫瘍効果を検討する。クロファラビンが細胞に与える毒性として従来のヌクレオシドアナログと異なる点はミトコンドリアが挙げられる。クロファラビンはミトコンドリアDNA内にも転入されるので本薬によるミトコンドリア障害が抗腫瘍効果にどれほどの貢献をするかが問題となる。もしミトコンドリアDNAの阻害が重要であるなら、ミトコンドリア障害によるミトコンドリア電位変化、ATP産生能、ミトコンドリア酵素活性について検討が必要と考えられる。さらにエチジウムブロマイドによりミトコンドリアDNAを消失せしめたのちのクロファラビンの細胞毒性発現、感受性の変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度以降シタラビン耐性亜株におけるクロファラビンの感受性を検討するために以下の実験を継続する必要がある。 1,HPLC法によるシタラビン、クロファラビン単独あるいは併用時の細胞内シタラビン3リン酸生成、クロファラビン3リン酸生成の定量:55万円(陰イオン交換カラム カラム10万円/本x5本、リン酸緩衝液、ヌクレオチド抽出試薬5万円) 2,Western blot法によるシタラビン、クロファラビン効果とリン酸化酵素タンパク量の関連など活性経路の検討:30万円(deoxycytidine kinase、deoxyguanosine kinaseの抗体 20万円、Westernのための試薬フィルムなど10万円) 3,シタラビン、クロファラビンの細胞核DNA内転入量の定量:30万円(放射性同位元素標識シタラビンならびにクロファラビン それぞれ15万円) 4,シタラビン、クロファラビンの殺細胞効果の検討:35万円(XTT法による細胞培養増殖定量のための培養物品・器具、プラスチック器具、15万円、フローサイトメトリーのためのAnnexin V, PIなどの試薬 20万円)
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Research Products
(4 results)