2012 Fiscal Year Research-status Report
分子標的治療薬の新規薬力学評価法―非小細胞肺癌のがん性胸膜炎をモデルとして
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23501314
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
久保 昭仁 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60416245)
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Keywords | 非小細胞肺癌 / 癌性胸膜炎 / 分子標的治療 / 薬力学 / 薬物動態 / FDG-PET / 化学療法 |
Research Abstract |
【目的】非小細胞肺癌の癌性胸膜炎をモデルとする分子標的治療薬の薬力学評価系を確立すること。 【方法】非小細胞肺癌の癌性胸水および血液検体を用いて、分子標的治療における経時的な生体および腫瘍細胞の変化を解析し(薬力学)、同時に血液および胸水の薬物動態を評価する[PHarmacokinetic/PHarmacodynamic Assessment on Malignant Effusions (PHAME法)と命名]。18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography (FDG-PET)を用いたイメージングによっても薬力学的検討を行う。 【進捗状況と結果】癌性胸膜炎を合併した非小細胞肺癌患者を対象として上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤(ETKI) ゲフィチニブおよびエルロチニブによる分子標的治療を行い、薬物動態および薬力学的検討を行った(臨床試験登録番号: UMIN00002953)。その結果、持続的な胸腔ドレナージを必要とする進行肺癌患者においても経時的な胸水・血液サンプリングが安全に実行できることが示された。ETKIの胸水移行および効果発現は非常に早く、奏効例では治療開始3時間で胸水中薬物濃度が治療域に達し胸水中がん細胞がアポトーシスを起こすこと、治療効果が持続する症例では血中および胸水中の薬物濃度が早期に上昇する(分布が早い)ことを明らかにした。ETKI治療を受けた患者の経時的胸水・血液サンプルを用いてメタボローム解析を行い、血液および胸水代謝産物がETKIのバイオマーカーとなる可能性が示唆された。バイオイメージングでは、ETKI治療を受けた進行肺癌患者と従来の殺細胞性化学療法の薬力学をFDG-PETによって評価した(臨床試験登録番号: UMIN000006682)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ETKIとしてゲフィチニブを用いた研究は予定された治療・観察期間を終了し、臨床解析および主要な基礎解析を終えた。現在論文を執筆中である。 ゲフィチニブ試験の臨床検体を用いた2次解析となるメタボローム解析を探索的に実施した。血液および胸水代謝物がゲフィチニブ薬物動態のバイオマーカーとなる可能性があり、さらに検討中である。 EGFRリガンドであるTransforming growth factor-alpha (TGFa)、amphyregulin (AR)およびETKI耐性に関与するhepatocyte growth factor (HGF)について検討した。ARおよびHGFは血中に比較して胸水中の発現レベルが3-5倍高いのに対し、TGFaは胸水における発現レベルは極めて低値である。血中TGFaはETKI投与によってほとんどの患者で低下しておりETKIによるEGFR阻害との関連が密接である。 分子標的治療の薬力学的評価法としてFDG-PETを用い、従来の殺細胞性化学療法との比較検討を行った。進行非小細胞肺がん症例を対象に前向き臨床試験を実施し、分子標的治療としてETKI ゲフィチニブ(G療法、19例)、殺細胞性化学療法としてカルボプラチン+パクリタキセル併用療法(CP療法、19例)について解析を行った。その結果、殺細胞性CP療法よりも分子標的G療法において、早期(治療開始48時間後)のFDG-PETにおけるFDG集積低下がよりよく腫瘍縮小効果、腫瘍再増大までの期間(無増悪生存期間)、全生存期間と相関することが明らかとなった。論文投稿中である。 非小細胞肺癌に高発現するCK8を薬力学マーカーとして評価した。CK8は、細胞浸潤を負に制御する一方で、血中CK8は予後不良因子である。血中CK8は腫瘍量を反映すると考えられ薬力学マーカーとなりうる(2012年論文発表)。
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Strategy for Future Research Activity |
PHAME法によるETKIゲフィチニブの薬力学研究結果について論文を執筆中である。 ETKI治療症例の経時的血液・胸水検体を用いたメタボローム解析を継続する。血液および胸水代謝物がETKI薬物動態・薬力学のバイオマーカーとなる可能性がある。血清サンプルで得られた結果が血漿サンプルを用いた実験でも再現された。今後バイオマーカーの候補代謝物の絞り込みを行う。 薬力学研究の分子標的治療と従来の殺細胞性抗癌剤による化学療法との違いについてFDG-PETを用いた薬力学的評価法において検討した。治療開始後の腫瘍組織におけるFDG集積低下は画像診断における腫瘍縮小よりもずっと早く、この変化は殺細胞性化学療法よりもETKI治療においてより顕著であった。本研究は論文投稿中であり、早期採択を目指す。 近年新たな非小細胞肺癌の発癌過程におけるdriver mutationとしてALK遺伝子が転座により融合遺伝子として活性化することが報告された。ALK融合遺伝子陽性の肺癌に対してALK選択的阻害剤クリゾチニブが保険適応となった。ALK陽性肺癌は非小細胞肺癌全体の5%以下と少数ではあるが、クリゾチニブに対してもゲフィチニブ・エルロチニブと同様に薬物動態・薬力学研究を含めた臨床試験を計画中である。 エルロチニブについての臨床試験は症例登録が遅れている。エルロチニブが進行肺癌の初回治療に使用できない(保険承認が得られていない)ことが登録遅滞の最大要因であったが、エルロチニブは近く初回治療に対しても薬価収載される見込みであり、今後の症例集積に期待する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PHAME法の原著論文および2次解析となるメタボローム解析についての論文完成とその成果発表を行う。論文発行までに国内外学会・研究会での情報収集、情報交換が必要である。そのための費用を計上した(国内外学会・研究会旅費等、合計70万円;情報収集のための学会・研究会等参加費、書籍、論文校正と掲載料等合計20万円)。 PHAME法によるエルロチニブ評価試験における解析を実施予定である。血液・胸水検体を用いて薬物動態解析、cDNAマイクロアレイ解析、免疫染色、ELISA解析、アポトーシスアッセイを実施する(共同研究として行うものも含め、計50万円を当方において使用予定である)。
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Research Products
(4 results)