2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸がん化学予防における核内受容体とその標的因子の分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
23501324
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
増田 園子 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (90157206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 卓二 金沢医科大学, 医学部, その他 (40126743)
小山内 誠 高知大学, 医歯学系, 准教授 (60381266)
寺崎 将 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (10391195)
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Keywords | 大腸がん幹細胞 / 核内受容体 / ビタミンD / フコキサンチノール / がん化学予防 / VDR / PPARG / RAR |
Research Abstract |
平成24年度本研究課題の研究実績の概要は以下のとおりである。 大腸がん化学予防における核内受容体及び標的因子の同定と発がんにおける機能解析を進めた。大腸がん幹細胞及び大腸がん病態モデルの系で標的遺伝子の同定を進め、ビタミンD、レチノイン酸、高極性キサントフィルなどの低分子脂溶性シグナルを介する標的因子の応答経路並びに病態における役割の解明を進めた。 大腸がん幹細胞の特異的マーカータンパク質に着目し、CD44 陽性細胞、EpCAMhigh細胞をがん幹細胞としてflow cytometer (FACS)により単離した。免疫不全マウスへの移植による腫瘍形成能、Sphare 再形成能、薬剤耐性能を指標に、大腸がん幹細胞特性を評価した。CD44 (+)/EpCAMhigh細胞に対する核内受容体 (PPARγ、PPARα、PPARβ/δ、VDR、RXR、RAR)、Akt/PI3K及びWnt/β-Catenin経路の遺伝子・タンパク質発現を網羅解析し、大腸がん幹細胞の標的分子、標的経路、バイオマーカーを探索した。がん幹細胞の特徴に着目し、proteasome活性を指標とする選択的大腸がん幹細胞を検出するため、分子イメージングによる可視化を行い、病態や腫瘍内微小環境との関連を解析中である。 ビタミンD欠乏に伴う発がんの分子機構を解明するため、ビタミンD代謝酵素であるCYP24A1に着目し、その発がん過程における役割を研究中であり、CYP24A1が広範ながん組織で非調節性に高発現することを見出した。また、CYP24A1の過剰発現に伴う腫瘍内微小環境でのビタミンD不足は、腫瘍細胞の悪性形質の獲得と密接に関連することを証明するデータを蓄積中である。本研究の展開から、CYP24A1が新規のがん遺伝子であることを証明し、CYP24A1を標的とする全く新しい治療戦略の創出を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度本研究課題『大腸がん化学予防における核内受容体とその標的因子の分子メカニズムの解明』は、概ね順調に進んでいると考える。 1)大腸がん化学予防における核内受容体とその標的因子の分子メカニズムを解明する 大腸がんの予防研究では、大腸発がんの最も初期病変と考えられるACFを標的とするアプローチに加え、大腸がん幹細胞を標的とすることも急務の課題である。平成23年度の成果をもとに、大腸がん幹細胞の特徴、特性を明らかにし、選択的単離とLive cell imagingにより大腸がん幹細胞を追跡できる体制を創出した。幹細胞と腫瘍内微小環境における網羅的な核内受容体の標的因子の同定と発がんにおける機能解析を進め、大腸がん幹細胞核内受容体を解析し、ビタミンD、レチノイド、キサントフィルによりVDR、RAR、RXR、PPARγが発がん抑制に極めて重要な核内受容体であることを見出した。さらに、大腸がん幹細胞及び大腸がん病態モデルの系で、マイクロアレイ法により、核内受容体の標的遺伝子の同定を進めている。 2)大腸がん化学予防を評価できるバイオマーカーの探索、発掘 新学術領域研究「蛍光生体イメージ」総括班主催「平成24年度第3回イメージング講習会 (東京)」に参加する機会を得た。大腸がんで亢進しているβ-catenin/Tcf転写活性は核内受容体のシグナリングで制御されることに着目し、可視化できれば、大腸がん幹細胞の動態、分化破綻の過程と浸潤・転移の機序が解明できる。支援班の専門家の指導のもとで試料作製から機器操作、画像化までのイメージング技術を修得できたことから、がん幹細胞の特性であるcell cycleやproteasome活性が低いことを利用して、がん幹細胞だけ蛍光発色させる技術を応用し、大腸がん幹細胞マーカー分子の開発に突破口を拓くことができたことの到達度は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸発がん過程において、自己複製能と多分化能を有し、がん組織全体の根幹となる大腸がん幹細胞 (Colorectal cancer stem cell: CCSC) を根絶することが重要である。大腸がん幹細胞に発現する核内受容体と新しい共役因子を標的として大腸がん幹細胞の機能を調節することは、大腸発がんを抑制しうる可能性がある。平成25年度本研究課題『大腸がん化学予防における核内受容体とその標的因子の分子メカニズムの解明』は、標的因子の新しい機能と病態における役割を示し、核内受容体を標的とする機能性脂質による大腸がん化学予防法を創出する。 大腸がん化学予防を目的とするバイオマーカーを探索するために、大腸がん発症モデルマウス(APC Min/+マウス、1,2-Dimethylhydrazine-/Azoxymethane 誘発、HT-29-/MC-26担がん)の作成段階で採取した血液をプロテオミクス解析し、大腸がん発症に関わる核内受容体をはじめとするバイオマーカーを探索する。変動する脂質をバイオマーカーとして特定するために、メタボロミクス解析を実施し、大腸がん化学予防に有効なマーカーであることを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題の研究最終年度であることを鑑み、研究代表者と研究分担者計4名の協力体制のもとで恒常的な研究を遂行するために、期間全体経費の30%を維持し、平成25年度は総額1,100千円を計上した。 研究データの蓄積を発展させるため、年間研究経費の60%を消耗品費660千円として使用し、定期的な試薬の購入に加えて、必要な標品の購入、ラベル標識体の合成、作用機序解析のマイクロアレイ購入に充てる。このうち、遺伝子・タンパク質解析には高額な試薬が必要となるため、220千円(年間経費20%相当)を計上した。研究用試薬・標品購入と化合物分析用消耗品にそれぞれ110千円(同10%相当)を充てる。病理組織の解析実験経費及び実験動物の作成・維持管理費並びにがん予防成分を添加した特別飼料を作成する必要があるため、それぞれ110千円(同10%相当) を計上した。 研究を推進するため、実験補助人材を活用するための謝金165千円(同15%相当)を計上し、積極的な研究成果発表と十分な研究打ち合わせのための旅費110千円(同10%相当)を計上し、成果発表の印刷物作成などのその他経費165千円(同15%相当)をあわせて、平成25年度年間経費総額1,100千円とした。
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[Journal Article] Organomagnesium suppresses inflammation-associated colon carcinogenesis in male Crj: CD-1 mice.2013
Author(s)
Kuno, T., Hatano, Y., Tomita, H., Hara, A., Hirose, Y., Hirata, A., Mori, H., Terasaki, M, Masuda, S., and Tanaka, T.
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Journal Title
Carcinogenesis
Volume: 34
Pages: 361-369
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Combined antiproliferative effect of dietary PPARγ suppressing lipids fucoxanthinol and 1α,25-dihydroxyvitamin D3 in human colon cancer cells.2012
Author(s)
Terasaki, M., Nagao, A., Maeda, H., Miyashita, K., and Masuda, S.
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Journal Title
Carotenoid Sci.
Volume: 17
Pages: 40-43
Peer Reviewed
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