2011 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム網羅的関連解析により導かれた胃がん発生抑制分子経路の解明とその創薬への応用
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23501327
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
佐伯 宣久 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (80466200)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胃がん予防 / 易罹患性遺伝子 / PSCA |
Research Abstract |
本研究の代表研究者が行った先行研究により、Prostate stem cell antigen (PSCA)が胃上皮細胞において胃がんの発生を抑制する機能を持つことが示された。本研究は、PSCAが胃上皮細胞において機能する分子経路を解明し、化合物などの投与によりマウスの胃上皮細胞においてこの経路の活性を高める方法を開発することを目的とし、最終的にはこのPSCA分子経路の機能を強化することによる胃がん予防法の開発をめざすものである。本研究では具体的には、(1)PSCA遺伝子の発現制御分子経路の解明、(2)PSCAタンパクのリガンドの同定、(3)PSCAシグナル伝達経路の解明、さらに、以上より得られた知見に基づいて(4)マウスの胃におけるPSCA分子経路の機能を高める方法の開発、を行う。平成23年度の研究において、胃がん由来培養細胞株を用いたレポーターアッセイによりPSCA遺伝子の上流に発現調節領域(約200bp)を同定した。この発現調節領域の塩基配列について既知の転写因子結合配列を検索し、結合する転写因子候補を15種リストアップし、その転写因子に対する抗体を取り寄せて、現在、ゲルシフトアッセイにて真の結合転写因子の絞り込みを行っている。ここで得られた転写因子を手掛かりにPSCAの発現を調節する分子経路を明らかにする予定である。また、免疫沈降法によるPSCA結合タンパクの同定については、PSCAにFLAGタグを付加した融合タンパク(FLAG-PSCA)を発現する発現ベクターを作成し、これを胃がん由来培養細胞株に導入・発現させ、その細胞溶解液について抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、FLAG-PSCAが沈降することを確認した。今後FLAG-PSCAと共に免疫沈降するタンパクを回収するが、PSCA結合タンパクが同定された場合、PSCAシグナル伝達経路を解明する上で重要な手掛かりとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に実施予定の課題は"PSCA遺伝子の発現に関わる転写因子の同定とさらに上流の分子経路の解明"であり、具体的には、1)レポーターアッセイによるPSCAの発現に重要な発現調節領域を検索、及び2)この発現調節領域にin vitroで結合する転写因子の同定、を計画していた。平成23年度の研究において、胃がん由来培養細胞株を用いたレポーターアッセイによりPSCA遺伝子の上流に発現調節領域(約200bp)を同定したことから上記1)についてはすでに達成できている。この発現調節領域の塩基配列について既知の転写因子結合配列を検索し、結合する転写因子候補を15種リストアップし、その転写因子に対する抗体を取り寄せて、現在、ゲルシフトアッセイにて真の結合転写因子の絞り込みを行っている。したがって2)についてはまだ遂行中である。また、平成24年度に実施予定であった"免疫沈降法などによるPSCA結合タンパクの同定"について、前倒しして平成23年度より開始した。PSCAにFLAGタグを付加した融合タンパク(FLAG-PSCA)を発現する発現ベクターを作成し、これを胃がん由来培養細胞株に導入・発現させ、その細胞溶解液について抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、FLAG-PSCAが沈降することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きゲルシフトアッセイを行い、発現調節領域に結合する転写因子の絞り込みを進め、得られた結合転写因子について、クロマチン免疫沈降法やsiRNAを用いたノックダウンを行って、実際に発現調節に関わることを確認する。この転写因子を手掛かりにして、さらに上流の発現調節分子経路を推測し、培養細胞を用いてこれを実験的に確認する。この分子経路の構成について分析を行い、動物細胞にてPSCAの発現を上昇させることができる因子について考察し、動物実験を念頭におきながら因子の選択を行う。加えて、平成24年度に実施予定の"免疫沈降法などによるPSCA結合タンパクの同定"を継続する。抗FLAG抗体を用いて細胞で発現させたFLAG-PSCA融合タンパクを免疫沈降し、これと共に沈降するタンパクを2次元電気泳動により展開した後、銀染色によりスポットとして検出し、これをゲルより回収して質量分析にかけてタンパクの種類を同定する。ここで得られたPSCA結合分子から細胞内シグナル伝達経路を推測し、培養細胞を用いた実験(タンパク修飾や遺伝子発現解析)によりその経路を確認する。培養細胞を用いてPSCAシグナル伝達経路を活性化させることができる因子について考察する。動物実験を念頭におきながら活性化因子の選択を行う。また、もし免疫沈降によりPSCA結合タンパクを得ることができなかった際には、PSCAを発現していない培養細胞にPSCA発現ベクターを導入・発現させ、それに伴って生じる発現遺伝子群の変化やリン酸化されるタンパク群の変化を、トランスクリプトームやプロテオームの手法を用いて捉え、PSCAが関わる細胞内シグナル伝達経路を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の所要額は2,000,000円としてあるが、これについては実験に必要な試薬・消耗器具や細胞培養用試薬、質量分析の外部委託に要する経費に充てる予定である。また、免疫沈降にてPSCA結合タンパクが得られた場合は、このタンパクを同定するために質量分析(外部委託)を行う。
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