2011 Fiscal Year Research-status Report
土壌水の浸潤・脱水過程における界面形状変化の精密計算と物質輸送解析への応用
Project/Area Number |
23510003
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川西 琢也 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (80234087)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 土壌 / 浸潤 / 脱水 / GPGPUコンピューティング / 粒子法 / 毛管力 / 粒子の濡れ特性 / 物質輸送 |
Research Abstract |
本年度の実験計画は(1)土壌孔隙の単一のthroatへの液体の浸潤,脱水過程をできる限り正確にシミュレーションできるようにすること,(2) 土壌粒子数を徐々に増やし,最終的に数十個の土壌粒子層における現象のシミュレーションを行い,ヒステリシスを再現すること,であった. 平成23年度終了時点で,この(1)の浸潤過程の解析ができるようになった段階であり,約半年の遅れが生じている.これは,使用している粒子法ソフト(Particleworks)をこの研究に必要な形にセッティングする(いわゆるチューニング)に予想以上の時間がかかったためである.具体的には,粒子の「濡れ特性」をどのように扱うか,という問題で試行錯誤が必要だったが,結果として,粒子表面を,水の層で覆ってしまう,というやり方が,当研究の目的には最も適していることが分かった.この方法で単一throatへの水の浸潤過程を,計算により再現することに成功した. 以上の検討で,このソフトにより十分な解析ができると判断し,申請していたGPGPUワークステーションを導入した.今後はこのGPGPUワークステーションで計算を進めることになる. また,解析をすすめるなかで,正三角形状に配置した等径粒子の,3つの接点のまわりにできる水膜(リング)が大きくなって合一するという,最も基本的な浸潤過程において,3つのリングが均質に大きくなるのではなく,一つのリングが大きくなって,他のリングを飲み込む形が繰り返し再現された.これは throatへの浸潤毛管圧を考慮するうえで重要な知見であると考えられるため,数値計算に加えて,理論的な検討を行う必要がある. 以上,粒子法のthroatにおける浸潤過程の解析まで研究は進んでおり,新たな研究課題も浮かびあがってきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究では,特に,仮想土壌粒子の濡れ特性が重要な因子となる.粒子法という新しい手法による流体解析ソフトウェアを使っているが,このソフトがこの「濡れ」を扱う手法(ポテンシャル法・理論は開示されている)の「クセ」を理解し,計算に反映させるのに時間がかかった.すなわち,パラメーターの与え方,計算の時間刻みの変更など,さまざまな試行錯誤を行って,当研究の目的にあうような条件を求めるのに,予想以上に時間がかかったため,遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
計算において問題であった濡れ特性の与え方は,土壌粒子表面をあらかじめ水の膜で覆っておく,という形で解決をみた.研究全体の進行は,研究計画と比べて,約半年の遅れと見積もっている. しかしながら,もともとの計画(申請書)では,最終年度は実質的に半年で終わり,その後は次の段階に向けての準備にあてていた.このため,計画・目標の大幅な変更は必要ないと考える.また,浸潤過程の基礎の基礎である3粒子間の水膜の合一過程の機構に関して新たな課題が出てきた.この課題については国内の専門家と相談し,こちらのほうが重要ということになれば,計画を若干変更しそちらに注力するかもしれない. 具体的には,(1) 本年度前半に数十個の粒子への水の浸潤・脱水過程をシミュレートできるようになること,(2) 後半には,浸潤速度,年度の界面形状への影響を検討し,さらに,界面形状(空気と水分の分布)の土壌気相拡散係数への影響について検討する.また,研究の途中経過を「地下環境水文学に関する研究集会」で発表し,当該分野の専門家と意見交換を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ソフトウェアのメンテナンス費用とデータ保存HDDに40万円弱かかる.残り40万円のうち30万円弱を物質輸送ソフトの購入費用にあてる.残り10万強で2回程度,研究打合せの出張ができると考えている.
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