2012 Fiscal Year Research-status Report
土壌水の浸潤・脱水過程における界面形状変化の精密計算と物質輸送解析への応用
Project/Area Number |
23510003
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川西 琢也 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (80234087)
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Keywords | 土壌 / 多孔質体 / 浸潤 / 脱水 / 界面 |
Research Abstract |
平成 24 年度は, 粒子層中の水の浸潤・脱水過程における水分の分布および界面の形状を粒子法の一種 MPI 法のソフトウェア Particleworks (プロメテック・ソフトウェア)を用いて様々な条件設定で計算した. その結果, 一応, 水の移動についてはシミュレーションできるものの, 界面形状については, 研究課題名にあげた界面形状変化の「精密」な計算に関しては満足な結果が得られなかった. 具体的には, 粒子間にできる水のリング(Pendular ring などとよばれる)の形状について, 本来ならくびれが生ずる部分が円筒に近い形にしかならなかった. この点について, 申請書の「計画どおりにいかない場合について」にしたがって, 計算条件の変更, 粒子の解像度の調整ができないかを検討した. 結論としては, MPI 法では, 気液界面のメニスカスにおける圧力の飛躍(毛管圧)をうまく取り扱えないことが, 形状がうまく計算できないことの主な原因であると考えられた. 実際の系では, この毛管圧が水柱の高さとバランスするのだが, MPI 法では, 特に Pendular ring などにおいて, 界面の粒子と内部の水との間に圧力差が生じて, 粒子の移動が生じ, 安定した界面が得られなかったものと考えられる. ただ, MPI 法では, この Pendular ring の合一などの過程は, 界面形状に正確さを欠くが, それなりに計算できることは明らかになった. そこで, 申請書に「予期せぬ困難は,環境物質動態学の新たな課題になり得る」を検討する段階に入ったと判断し, 界面形状精密計算の新たな手法を試みることにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に書いた「予期せぬ困難」が生じたため, MPI法(粒子法の 1 種)による大規模な粒子層での界面形状計算を断念せざるを得ないと判断した. このため, 申請書に書いた「予期せぬ困難は,環境物質動態学の新たな課題となりうる」の考えにしたがって, 界面形状計算の新たなモデルを開発する方向で研究を進める. ただ, MPI法に見切りをつけるまでに時間がかかってしまったと反省している. 以上のことを考慮して, 達成度としては, やや「遅れている」と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
粒子層への水の浸潤・脱水過程における界面形状を計算する新たなモデルを開発する. 研究期間内には, 粒子層中の水の量の変化により界面形状がどのように変化するのかを, 局所平衡にもとづいて計算するところまでを達成したい. 粘度の影響については, その後の課題とする. これでも, 土壌中の水分分布を予測するのにかなり優れたモデルになると考える. 具体的には, 界面と粒子表面上にテンポラリーなメッシュを作り, 界面張力, 濡れを考慮してエネルギーの最小化により界面形状を決定する. 界面の合一, 分離は, 幾何学的には境界のある図形の張り合わせと, 種数(トーラスなどの穴の数)の変化としてとらえることができる. このいずれにおいても, メッシュを再生成する必要があると考えられ, これをどのようにプログラミングするかが課題となる. 期間内に, 十数個の粒子による粒子層での水分量の変化と界面形状の変化を浸潤・脱水両過程で計算できるようにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MPI 法は界面形状は不正確であるが, 界面の合一, 分離は一応計算できるので, 比較のため, Particleworks のライセンス料を本年度も支払うことにする. GPU 分を含めて 30 万円程度が必要となる. 新たな計算手法を試みるために, ワークステーションを 1 台導入する. これに 20 万円程度かかる. 残りは, ハードディスクの購入, 国内学会旅費に使う.
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