2013 Fiscal Year Annual Research Report
トンネルを使った大規模、長期排水実験による地下構造物が地下水に与える影響評価
Project/Area Number |
23510007
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
井伊 博行 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60283959)
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Keywords | 地下水 / トンネル / 環境同位体 / 鉱山 / 湧水 / 蒸発率 / 海藻 / 水生昆虫 |
Research Abstract |
地下水の流動の面から松本トンネルの排水による長期的な地下水による影響を調べた。さらに、化学的な面から複数の鉱山跡の排水の影響を調べた。また、地下水の流動を調べるための手法である水の酸素、水素の同位体比を使っての水の涵養域(起源)の推定や蒸発量の推定法を確立した。松本トンネルでは、1990年から2014年の24年間の長期的なトンネル掘削時からの排水による影響を評価した。水の酸素水素同位体比からトンネル湧水は台地上の降雨が起源と推定され、24年間変化していない。全湧水量は1000万トンにも達しているが、トリチウムの濃度変化から、台地上の雨水が地下に浸透してからトンネル内に出てくるまで少なくとも数十年以上の時間が経過していることが解った。したがって、現在排水されている水はトンネル掘削時にすでに岩盤内に貯蔵されていた水が排水されている。この貯蔵された水は岩石の間隙にあった水である。供試体およびトレーサ試験から導き出された間隙率は約10%である。全湧水量1000万トンは涸れた井戸や湧水地点から推定される地下水位から推定される全地層の間隙率の22%に相当し、78%の間隙水は排水されておらず、トンネルレベルよりも上にある地下水がすべて入れ替わるには、さらに約80年が必要であることが解った。 大機規模なトンネル掘削を伴う鉱山では坑内周辺の硫化鉱物が酸化され、酸性で重金属を含む排水による影響を、坑内排水、水生昆虫、海藻の重金属濃度を測定して評価した。鉛山鉱山、志津木鉱山の海岸では海藻を、和意谷鉱山では、水生昆虫から銅、亜鉛、ヒ素の汚染を調べた。 同位体を使った涵養域の推定法は、豊平川流域での冬の降雪による水の涵養の重要性を、酸素、水素同位体比を使って解明した。涵養過程で水がどの程度蒸発するかについては、水が蒸発すると同位体比が変化することを使って、室内実験で同位体比と蒸発量の関係を明らかにした。
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