2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジア沿岸開発に伴う海底地形及び海況の変化の解明
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23510009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (80223494)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 渤海 / 海岸線変化 / 中国 / 潮汐モデル / 経済発展 |
Research Abstract |
当初計画では、初年度である23年度に東シナ海全体の海底地形データ作成、次年度の24年度に作成した地形を使った数値実験を行う予定であったが、23年度は東シナ海を構成する3つの海域のうち、最も北に位置する渤海に限定して集中的に海底地形作成と潮汐モデル推算を行った。海底地形作成は、中国海軍及び米国大気海洋庁発行の海図を当初計画通りの手順で水深を電子的に読み取った後、ソフトウェアによる補間処理を施すことで行った。その結果、想定通りの品質のデジタル水深データが作成可能であることが確認することができた。黄河河口の地形が急変する前の1970年代、河口地形改変が一段落する一方、渤海西部にて沿岸埋め立てが本格化する前の2000年代初頭、並びに沿岸域の開発が急速に進み、天津市周辺を中心に埋め立て面積が飛躍的に拡大した2010年頃の3つの時代の地形を作成している。ただし、海図からだけでは2010年の海岸線の情報を得ることが出来なかったため、一部海域に関してはランドサット衛星の画像を用いることで補正を行っている。作成した3つの時代の地形を用いて、時代毎の潮汐場の移り変わりを潮汐モデルにより見積もった。その結果、1970年代から2000年代初頭にかけての黄河河口地形の変遷により、渤海南部の菜州湾の潮汐振幅が最大10cm単位で変化し、しかも振幅増減の傾向は湾の東西で異なっていた。これらの結果は菜州湾の検潮所記録での経年変化と良く対応しており、この海域の潮汐変化に黄河河口地形変化が大きく寄与している可能性が示唆された。一方、渤海西部の渤海湾では潮汐振幅がやや減少していた。渤海湾の潮汐振幅は、2000年代初頭から2010年にかけては逆に増大するという計算結果が出たが、この潮汐振幅が減少から増加に転じるパターンは天津港の潮位記録からも見られ、沿岸開発が渤海湾の潮汐振幅に影響を及ぼしていた可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた海底地形データの作成は一部海域について実施しなかったものの、主眼である地形のデジタル化技法の確立については十分達成できたと考えられる。その一方、次年度実施予定だった渤海の潮汐変化の見積もりを前倒しで実施し、沿岸域の自然・人為的地形改変が、渤海の潮汐場を実際に大きく変えている可能性を示唆する成果を得ることが出来た。以上の点から、研究は全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った渤海の地形作成、潮汐推算の経験を踏まえ、研究の対象を渤海以外の東シナ海に広げ、しかも計算の対象を海流や高潮など他の要素についても変化を調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・本年度、繰越額が生じた理由当初計画では、研究対象海域すべて(渤海・黄海・東シナ海)の海図を購入して研究を行う予定であったが、実際には一部海域(渤海)に焦点を絞って研究を進めた関係で、他海域関連で予定していた経費を使用しなかったため。・翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画昨年度の経験から必要性が明らかになった紙海図をスキャンするための大判スキャナを導入するとともに計算結果や地図データ保管用のハードディスク、パソコン消耗品などを購入する。研究打ち合わせ、並びに成果発表を1回ずつ行う。
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Research Products
(1 results)