2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジア沿岸開発に伴う海底地形及び海況の変化の解明
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23510009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (80223494)
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Keywords | 東シナ海 / 海岸線変化 / 中国 / 海洋モデル / 経済発展 / 海面上昇 |
Research Abstract |
2年目に当たる本年度は研究対象海域を昨年度の渤海から東シナ海全体に広げ、海底地形データの作成と数値計算による過去数十年間の波浪・潮汐変化の推算を行った。 海底地形作成に関しては、中国、韓国、日本、米国、英国の紙海図・電子海図の水深情報並びに人工衛星画像による海岸線情報から1970年代、今世紀初頭、ならびに2010年前後の3つの時代における海底地形データを作成した。東シナ海には幅10km前後の細長い砂州が多数存在する海域が散在するが、その中でも黄海南東海域に着目して地形データの精度が数値モデル結果に及ぼす影響を詳細に調べた。その結果、小縮尺の海図に記載された水深のみを用いて海底地形を再現した場合、細かな地形の凹凸を再現できないだけではなく、平均水深の推計値についても解像度が細かい大縮尺海図の水深を採用した場合に比べて推計水深が20%程度変わり、潮汐計算結果も一部海域では観測値から大きくずれてしまうことがわかった。すなわち地形変化が激しい海域では、地形変化の向きや空間スケールに応じて十分な量の水深データを収集することの重要性が明らかになった。さらに、北朝鮮沿岸のように最新の測深データが無い海域では、衛星画像に基づく海岸線情報を取り入れることが、数値計算の精度向上につながることが確認された。 得られた地形データを元に、潮汐ならびに波浪モデルを動かした結果、中国・韓国沿岸の人為的海岸線改変に伴う潮汐振幅や有義波高の変化が東シナ海各所で推定され、特に沿岸域において変化の度合いが大きいことが示された。現在日本をはじめ各国で一般的に用いられている東シナ海海底地形は、人為的改変が今日よりはるかに少ない1970年代以前の情報に基づいており、本研究結果は、海洋モデルによる東シナ海環境モニタリングを行う上で最新の地形データを使用することの重要性を指摘するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
地形データの整備、潮汐や波浪変化の推定という大目標は達成できたが、精度や空間解像度の異なる海図から作成した海底地形の妥当性検証に想定以上の時間を要し、当初予定していた海流変化の数値予測は行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成25年度は、本年度までに作成した海底地形データを用いて、海流ならびに堆積物輸送経路の変化を数値モデルにより検証するとともに、結果のとりまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・本年度繰越額が生じた理由 当初中国での成果発表を予定していたが、現地学会主催者から日本人の参加自粛要請が出た関係で海外出張が取りやめになったため。 ・翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 最新の海図を購入するとともに、結果保管用のハードディスクをはじめとするパソコン消耗品などを購入する。結果検証用資料の収集と成果発表を1回ずつ行うとともに、論文投稿にあたって英文校閲を依頼する。
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Research Products
(3 results)