2011 Fiscal Year Research-status Report
都市型人工塩性湿地における生物圏と環境圏間の炭素フラックスの実態と機序解明研究
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23510011
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30315973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 徹 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00527773)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CO2 フラックス / 人工塩性湿地 / チャンバー法 / 有機物分解 |
Research Abstract |
干潟(塩生湿地)は生物活性が高く有機物分解能が高いと言われている。室内実験での干潟の有機物分解に関する研究は数多く行われているが、水位や温度など時々刻々と変化する現場環境を再現できていないという課題がある。また干潟現地にて有機物分解を測定する方法は確立しておらず、世界的にも測定例が少ない。さらに、浅場や干潟には海水中の炭素を固定する「ブルーカーボン機能」が注目されており、干潟の炭素固定量の把握と評価が急がれている。本研究では、現地実験で干潟堆積物からの排出または吸収される二酸化炭素量の測定を行い、炭素の吸収・固定・排出に及ぼす温度、干出・冠水特性、地下水位、ならびに底生生物(海藻や底生微細藻類、小型底生動物)の影響を定量的に評価し、都市型人工塩性湿地における有機物分解と光合成活性の特徴を明らかにすることを目的とした。測定に際してはチャンバー法を採用し、干出時に干潟堆積物にチャンバーを被せ、容器を出入りする気体の二酸化炭素の濃度変化から堆積物から排出または吸収される二酸化炭素量を算出した。なお、チャンバーへの気体の流入量と流出量は等しく、チャンバー内の圧力が陽圧および陰圧にならないよう注意した。チャンバーは、完全に光を遮断する暗チャンバーと透明で光を通す明チャンバーの二つを用いた。ここで、暗チャンバーによる二酸化炭素の排出を有機物分解によるもの、暗チャンバーと明チャンバーとの差を光合成による二酸化炭素の吸収とした。測定を行った結果、有機物分解速度は温度依存性が強く、また、底生生物量が大きい夏季に最も大きくなった。一日の変化では、地下水位が下がるにつれて有機物分解が大きくなった。一方、光合成量は底生微細藻類量が大きく光量の高いときに大きくなり、地下水位との関係は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表や学会誌に研究成果の一部が記載されたことによる
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Strategy for Future Research Activity |
現在、暗チャンバーを用いて人工塩性湿地におけるCO2フラックスの動態を究明しているが、今後は暗チャンバーとともに底生微細藻類や短年生緑藻の光合成の影響を受ける明チャンバーを用いた現地実験を展開する。解析の障害要因となる短期間の光照射が暗条件での光合成に及ぼす影響については室内実験で検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度CO2アナライザーを購入したため、既存の1台と併せ2台となった。そのため、現地において同時に複数の地点あるいは方法(明・暗条件など)での観測が可能となった。次年度は、この機器を用いた現地観測を複数回行い、そのための試薬・ガラス機器・資材等の購入ならびにレンタカーなどによる機材と試料の運搬に研究費を使用する。また、得られた成果を国内の学協会に発表するための旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)