2012 Fiscal Year Research-status Report
都市型人工塩性湿地における生物圏と環境圏間の炭素フラックスの実態と機序解明研究
Project/Area Number |
23510011
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
矢持 進 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30315973)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 徹 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (00527773)
|
Keywords | CO2フラックス / 人工塩性湿地 / チャンバー法 / 有機物分解 |
Research Abstract |
目的:ポアーフロンチューブを用いたチャンバー法により現地干潟にて干出時とともに冠水時も測定を行い、潮汐による水位の変動とCO2フラックスの関係を検討した。 結果:大阪南港野鳥園湿地における干出時のCO2フラックスは3.5~10.0 mgCO2/m2/minであったが、一日のうちでも変化がみられ、干出時のCO2フラックスと地下水位との間には明瞭な負の線形関係が見られた。これは地下水位の低下に伴い堆積物内に酸素が供給され、好気的分解が促進したためと考えられた。また、冠水時については、CO2フラックスの平均値は0.7mgCO2/m2/minで、干出時と比べて1/5~1/40であり、時間および水位による変化は見られなかった。これは堆積物内に海水が満たされ酸素の供給量が少なくなり、有機物分解速度が小さくなったためと考えられた。次に、現地堆積物を持ち帰り、実験室にて温度一定のもと、上げ潮①、下げ潮①、上げ潮②、下げ潮②の2潮汐間を模してCO2フラックスを測定した。その結果、干出時は地下水位が下がるにつれてCO2フラックスが大きくなり、現地と同様の特徴が認められた。また、全ての地下水位において上げ潮時の方が下げ潮時よりCO2フラックスが大きいという結果が得られた。冠水時は水位の変化にかかわらず堆積物からのCO2フラックスの変化はほとんど無く、CO2フラックスは干出時のそれと比較すると、冠水時の方が1/8~1/15小さい値となった。また、冠水直後のCO2フラックスは大きく、時間の経過とともに小さくなる現象が見られた。以上のことから、干潟のCO2フラックスは、一日の潮汐変動に伴って変化し、干出時には地下水位が下がるほどCO2フラックスが増加し、さらに上げ潮時は下げ潮時よりも値が大きくなること、また冠水時は干出時に比べCO2フラックスが1/8~1/15小さくなることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表や海外の学術ジャーナルに研究成果の一部が記載されたため。また、暗チャンバーにおける測定手法上の問題が解決したことと、明チャンバーでの測定手法の課題が明確になったことなどから、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現地実験において正確な測定の障害要因となる、チャンバー開閉時の短時間の光入射の影響については、現地実験前に測定点を約30分以上暗幕で覆うこと、およびチャンバー開閉時に光の入射を防ぐことによって解決できた。また、明チャンバーでの測定についても、底生微細藻類の光合成に基づくCO2の吸収のため、測定環境がCO2律速の状況になりやすいことがわかった。適正な大気流入量、堆積物表面積、チャンバー開閉頻度についての知見も得られたので、これに基づき正確な干潟堆積物のCO2フラックスを測定する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大阪湾圏における複数の自然および人工干潟で観測を展開する。そのため資材費・消耗品費や機器運搬費に研究費を充てる。また、得られた成果を国内外の学協会に発表するための旅費に使用する。
|
Research Products
(2 results)