2012 Fiscal Year Research-status Report
珪藻ブルーム期における珪藻食渦鞭毛虫の摂食量の評価
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23510012
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
太田 尚志 石巻専修大学, 理工学部, 准教授 (20364416)
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Keywords | 珪藻食渦鞭毛虫 / 群集組成 |
Research Abstract |
本研究では、珪藻食渦鞭毛虫を介した物質・エネルギー流束を定量評価する上で不可欠となる珪藻食渦鞭毛虫の特定(課題1)、渦鞭毛虫の珪藻摂食量の定量(課題2)を目標としている。研究初年度(平成23年度)は東日本大震災で実験材料の渦鞭毛虫株、餌料珪藻株が全滅したため、H23年度は実験環境の復旧を優先し、当初計画について若干の方向修正した上で、本格的な実験を24年度から開始した。24年度(当該年度)は、三陸沿岸海域を調査対象海域に設定し、珪藻ブルーム開始から終焉時期(2月下旬~5月下旬)に出現した渦鞭毛虫および珪藻の種同定(形態分類による)とそれぞれの群集組成解析、および渦鞭毛虫の食胞観察による珪藻食性の判別を行った。その結果、珪藻、および有殻渦鞭毛虫双方について種レベルでの被食-捕食関係が明らかになった(ただし細胞外摂食タイプ種を除く)。これにより、課題1(珪藻食渦鞭毛虫の特定)については解決に向けて大きく前進した。また、課題2(渦鞭毛虫の珪藻摂食量の定量)への取組の一環として、珪藻食渦鞭毛虫の摂食生態を把握するために必要となる代謝速度測定の予備的実験を実施した。この実験結果に関しては、解析完了には至っていないが、摂餌行動の観察に成功するなどの成果を収めた。なお、海外研究協力者である R. Massana博士、A.Calbet博士を訪問し、分子生物学的手法に関する技術指導を仰ぐ予定で渡航費用を計上したが、よりスケジュール調整が難航したため、実施には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H23年度は被災により研究計画の進行に大幅な遅れが生じたが、H24年度は、珪藻食有殻渦鞭毛虫の種同定、ならびに摂食した珪藻種の同定ができたことにより、珪藻、渦鞭毛虫双方について種レベルでの被食-捕食関係を部分的に明らかにすることができた(ただし細胞外摂食タイプ種を除く)。この成果は世界でも初めてと思われる(現在、論文投稿を準備中)。これにより、課題1(珪藻食渦鞭毛虫の特定)の達成に向けて大きく前進した。一方、課題2(渦鞭毛虫の珪藻摂食量の定量)の取組の一環に位置づけられる、珪藻食渦鞭毛虫の摂食生態を把握するために必要となる代謝速度測定実験に関しては、予備的実験を行ったものの、まだ解析完了には至っていない。また、上記の研究成果についてはさらなる調査、実験、データ解析が必要となるため、成果公表には至っていない。以上を総合的に判断すれば、当初交付申請に記載した「研究の目的」の達成度は、やや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画最終年度だが、計画全体の進行が大幅に遅れているため、H25年度は対応策として1年間の補助事業期間延長の申請をする予定である。H25年度以降は、①摂食生態を把握するために必要となる代謝速度(摂食速度、増殖速度、排泄速度)の測定(本試験)、②分子生物学的手法を用いた珪藻食判別法の確立(細胞外摂食タイプ種について)および無殻渦鞭毛虫の同定、③珪藻に対する渦鞭毛虫の摂食圧を推定するための現存量測定と現場実験を実施する。なお、③については、データ数を充足させるためH26年度4~6月の期間にも月1~2回の頻度で追加実験を計画している。また、次年度内に、関連学会等で成果発表を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・代謝速度の測定実験および分子生物学的解析実験を行うに当たり、実験器具類、試薬類を購入する(物品費600,000円)。 ・石巻沿岸域での現場観測と現場実験を実施するに当たり、地元漁業者に傭船委託に係る費用を支払う(謝金300,000円=傭船費20,000/回×15回)。 ・また、現場観測では作業補助員が必要となるため、アルバイト料を支払う(謝金150,000円=750円/時間/人×100時間×2人)。 ・学会等での成果発表および他の研究機関の研究者との情報交換を行うに当たり、国内旅費を計上する(旅費240,000=80,000/回×3回)。
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