2011 Fiscal Year Research-status Report
琵琶湖北湖沿岸域における底質の相違に関係する付着藻類の種類構成、現存量、基礎生産
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23510015
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Research Institution | Nagoya Women's University |
Principal Investigator |
石田 典子 名古屋女子大学, 文学部, 教授 (90191874)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 付着藻類 / 湖沼沿岸域 / 底質 / 基礎生産 / 物質代謝 |
Research Abstract |
本研究では,琵琶湖北湖において底質条件の異なる水域における付着藻類の種類構成,現存量および基礎生産を測定し,付着藻類の動態を底質構造との関係において明らかにすることにより,水質保全対策に貢献すること,また,湖の湖岸の保全や整備への指針を提示することを目的としている.沿岸域の付着藻類の種類構成,現存量および生産力に関係し,また沿岸域の基礎生産および物質代謝に影響すると考えられる底質の相違を明確にするために,底質構造に関する予備調査を行い,砂泥,砂,小礫,大礫,岩などさまざまな粒径の基質の構成割合を調べた.その結果をもとに,砂泥,砂,礫,岩および水草などのそれぞれの基質の割合が異なる代表的な地点として12地点を本研究の対象水域として選定した.沿岸域付着藻類採集調査として,平成23年8月,11月および平成24年3月の3期について実施した.この調査は平成24年の6月にも実施する予定である.それぞれの地点において水深1mから2mの範囲で4試料を採集し,種類構成と現存量を求めた.基質からはぎ落としもしくは洗い出しにより採取した付着藻類の現存量はクロロフィル法により色素量を求めるとともに藻体内の炭素,窒素の元素分析を行う.また,検鏡により藻類の種名を同定し,細胞数や群体数を計数するとともに体積から藻体量を求め,優占種を決定し,種類構成を求める.また,同時に植物プランクトンの種類構成,現存量を求め,それらの結果を付着藻類の結果と比較検討する.平成23年度の現地調査期間中に,水温,pHなど主な物理化学環境項目の測定や溶存態の窒素やリンの定量を定法に従って行った.付着藻類の光合成測定については,はぎ落とし希釈法により実施した.これまでの調査により,琵琶湖北湖の沿岸域の付着藻類に関する様々な基質の分布をもとめ,付着藻類の現存量,種類構成および光合成に関する知見を得るための試料が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3ヵ年計画のうち,初年度に予定していた平成23年5,6月における底質構造に関する調査ならびに8月,11月および平成24年3月の沿岸域付着藻類採集調査については,予定通りに完了し,継続してそれらの試料分析とデータの処理を行っている.生産量の測定に関しては,はぎ落とし希釈法を用いて礫だけでなく様々な基質から付着物を採集し疑似現場法により測定を行うことができ,基質に関しての付着藻類の特性を知るための試料が収集された.したがって,琵琶湖北湖沿岸域の底質条件が異なる水域の付着藻類の現存量の把握および生産量の測定について初年度に関しての当初の目的はほぼ達していると考えられる.光合成の測定に関しては,当初現場でのチャンバーを用いる方法を検討することを予定していた.しかし,底質の粒度が細かく固定が困難である地点も多い.そこで,これまでも良い実績が得られているはぎ落とし希釈法による疑似現場法を用いてすべての基質試料について実施することとした.試料の分析および解析に関しては,付着藻類の現存量の分析は終了し,底質との関係で解析中である.しかしながら,藻類の種類構成,元素分析などについてはまだ未分析な項目があるため,今後速やかに進める予定である.特に付着藻類の種類構成の分析は重要な要素であるので,この項目について解析を進めたい.なお,河川系における予備調査を23年度に実施できなかったため,24年度の本調査に先駆けて実施する可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
沿岸域における付着藻類採集調査および光合成測定について,平成23年度に行った3期の調査に引き続き,同様な方法により4期目を平成24年6月に行う予定である.平成23年度の調査結果を踏まえて, 場合によっては他の時季に補足調査を行う可能性がある.これまでの調査結果について琵琶湖北湖沿岸域における付着藻類の現存量の分布を底質との関係において分析し,これらの結果を中心とする成果を今年度の陸水学会において発表する予定である.さらに平成24年度の調査結果を含めて解析し,琵琶湖北湖の沿岸域の代表的な水域における付着藻類の種類構成,現存量および基礎生産の分布および特性を明らかにする.これらの結果を底質構造との関係において検討し,その成果は平成25年をめどとして論文としてまとめる予定である.また,目的の一つとしている沿岸域の水草付着藻類の生産力に関する発展的な研究課題のため,模型を用いた現場実験については,生育状況との関係で時季は未定であるが24年度中に実施したいと考えている. 河川域調査については,予備調査を行い,琵琶湖の東部に位置する犬上川の下流部および西部に位置する安曇川中流部の平瀬から淵に変化する流程で中州がみられる2区域から候補地を選定する.礫からなる瀬と砂からなる淵およびそれらの移行帯について,粒径と付着藻類の種類構成,現存量および基礎生産を沿岸域の付着藻類に関して行った方法に準じて測定する.沿岸域調査との関係から夏以降に実施する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度予算については,沿岸域調査3回,予備調査2回の調査に係る旅費および人件費,備品であるノートパソコンや調査用具や実験器具,薬品などの物品費などについておおむね順調に支出された.平成23年度未執行の予算については,平成23年度調査の試料についてまだ未分析のものがあり,おおむねそのための薬品および消耗品に関するものである.平成24年度に採取予定である試料の分析のために必要とされる薬品や消耗品の購入予算に加えて支出する予定である.平成24年度については,琵琶湖北湖沿岸域における調査として1回,琵琶湖流入河川において実施予定である流水域の調査に関する3回のそれぞれの調査のための出張旅費,水中での採集調査におけるダイバー人件費,器材のレンタル費用および調査と分析補助のための学生アルバイト料を主な支出として予定している.旅費および人件費には,河川調査の調査地点を選定するための予備調査および水草付着藻類の生産力に関する発展的な研究のための現場実験に関する支出も生じる予定である.
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