2011 Fiscal Year Research-status Report
南大洋インド洋区における植物プランクトンサイズ組成の季節変動に関する研究
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23510019
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (60224250)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 植物プランクトン / 南大洋 / サイズ組成 / 季節変化 |
Research Abstract |
海洋生態系の一次生産者である植物プランクトン群集のサイズ組成を知ることは生態学的な知見を得るばかりではなく、生物地球化学的炭素循環に果たす海洋生態系の機能を考察することが出来る基礎的な情報となる。南大洋においても植物プランクトン群集のサイズ組成に関する研究は実施されているが、ある限られた時期、海域で得られたものであり、サイズ組成が季節的にどのように変化するかを明らかにした研究は無い。そこで南大洋インド洋区の東経110度線に沿った観測を時系列的に実施し、植物プランクトン群集のサイズ組成の季節変化を明らかにすることを目的とした。 その目的を達成するため、平成23年12月「しらせ」、平成24年1月「海鷹丸」、3月「しらせ」により観測を行った。計画した停船観測点の位置は、いずれの観測時期においても、東経110度線上の南緯40度、45度、50度、55度、57度30分、60度、62度の7点とした。停船観測においては、CTD-RMSを用いて鉛直的に海水試料を採取した。また、「しらせ」及び「海鷹丸」で用いている研究用表面海水試料を、航走中適宜採取した。得られた海水試料をもとに、多段ろ過装置を用いて植物プランクトンを、10um以上、2-10um、2um以下の3画分に分けた。また、サイズ分画効率を確認するため、同一海水試料を直接グラスファイバーフィルターでろ過した。各フィルター上に捕集された植物プランクトンが持つクロロフィルaをN,Nジメチルホルムアミドで抽出し、クロロフィルa濃度を蛍光法により船上において測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、計画した東経110度線の観測点(全7点)におけるCTD-RMSによる鉛直観測を、平成23年12月2~6日、平成23年12月29日~平成24年1月3日、3月9~14日に全て観測することができた。研究用表面海水を用いた表面観測では、平成23年12月に4点、平成24年1月に5点、3月に5点で実施することができた。鉛直観測においては採水器の不具合から一部海水採取が出来なかった層もあるが、観測計画は概ね順調に進展していると考える。 採取された海水試料を用い、10um、2umのニュクレポアフィルター(ポリカーボネイト製)、及びGF/Fフィルター(グラスファイバー製)で順次ろ過を行ったサイズ分画、並びに直接GF/Fフィルターでろ過した全量のクロロフィルa濃度分析用を作成した。N,Nジメチルホルムアミドで抽出した後、蛍光法により船上において測定した。クロロフィル濃度の測定に関しても概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた試料は分析が終了しており、平成24年度においては得られたデータのクウォリティー・コントロール、並びに解析を行う予定である。解析の結果によっては検証観測が必要となる可能性もあり、その場合は「しらせ」に乗船する第54次観測隊員に観測を委託する。また、研究代表者が「海鷹丸」に乗船し観測を実施する可能性がある。 解析結果については、関連学会等(2012年度日本海洋学会秋季大会【清水市】、第3回極域科学シンポジウム【立川市】を想定している)において発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究費の使用に当たっては節約を意識し、日本南極地域観測事業経費との経費分担(例えば、観測事業でもクロロフィルの測定を行っているところであるが、共通して使用する蛍光光度計の検定にかかる試薬等の折半)を行ったことから、120万円程度の節約ができた。この経費を有効に執行することにより、平成24年度に行うデータのクウォリティー・コントロールが格段に向上させることができる。 まず、平成24年度の主な作業であるデータ解析に先立ち、クロロフィル濃度の測定に用いた蛍光光度計の再検定を行い、データ・クウォリティーを向上させる。そのために必要な試薬を購入する。また、高速液体クロマトグラフでクロロフィル濃度を測定した結果と比較しデータの精度を向上させる。高速液体クロマトグラフ測定用試料を輸送するための保管用機を購入する。 再検証観測のための各種フィルター類、試薬等の購入、並びに乗船旅費を支出する予定である。 解析結果の学会発表にかかる旅費を支出する。
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