2012 Fiscal Year Research-status Report
南大洋インド洋区における植物プランクトンサイズ組成の季節変動に関する研究
Project/Area Number |
23510019
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
小達 恒夫 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (60224250)
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Keywords | 植物プランクトン / サイズ組成 / 南大洋インド洋区 / 季節変動 |
Research Abstract |
南大洋における植物プランクトン群集の長期変動は気候変動とも関連して重要である。本研究の最終目的は、過去と現在の南大洋の植物プランクトン群集に長期的な変動が起こっているかどうかを明らかにすることである。植物プランクトンの分布と組成は大きく季節変動する可能性があり、一般的には同一の地点、時期の観測データでなければ単純に比較できない。しかしながら、南大洋では観測データが限られており、そのようなデータセットは非常に少ない。そこで、我々は同一の地点で異なる季節における植物プランクトン群集にどのような変化があるのかを明らかにすることを目的として、2011/2012年にしらせと海鷹丸によって東経110度ラインの同一地点観測を12月、1月、3月という異なる時期に3回実施した。 その結果、南緯40度から南緯50度付近の亜南極域ではクロロフィル濃度は0.3-0.5mgm-3程度であり、10μm以下の小型植物プランクトンが優占していた。南緯50度から南緯60度付近の極前線付近では、クロロフィル濃度は0.4-0.6 mgm-3程度に上昇したが、組成は亜南極域同様に10μm以下の種類が全組成の50%以上を占めた。南緯60度以南の南極発散域ではクロロフィル濃度は0.6-0.8 mgm-3に上昇し、組成も10μm以上の種が80%近くを占めた。これらの分布と組成は、12月、1月、3月と季節が変化しても、それほど大きく変化はせず比較的均一であった。このことから、南大洋インド洋区、特に東経110度付近において植物プランクトンの長期的な変化を捉える場合、季節的な変化はあまり考慮する必要がなく、zonalな海域毎の変動を解析することにより、ある程度長期的な変動が推測可能であることが示唆される。本結果は、今後の長期的な南大洋のモニタリング計画の策定にも役立つであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り、平成23年度においては、南極観測船「しらせ」及び東京海洋大学「海鷹丸」による観測を実施することができた(「研究実績の概要」に記載した)。また、当初は、平成24年度の観測は計画していなかったが、観測機会に恵まれたため12月及び1月の時期ではあるが、平成23年度と同様の観測を実施することができ、データの蓄積を図った。さらに、植物プランクトン色素組成解析用のサンプルを取得しており、適宜分析を進めている。 以上のことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究から、南大洋インド洋区、特に東経110度付近において植物プランクトンの長期的な変化を捉える場合、季節的な変化はあまり考慮する必要がなく、zonalな海域毎の変動を解析することにより、ある程度長期的な変動が推測可能であることが示唆された。今後は、季節的に異なる時期に得られた当該海域における植物プランクトンのサイズ組成の長期変動解析を行うことにより、温暖化や海洋酸性化との関連を検討して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、関連学会等での成果発表及び科学雑誌への論文発表に伴う、旅費・論文校閲費に支出する予定である。
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Research Products
(1 results)