2012 Fiscal Year Research-status Report
植物プランクトンモニタリングのための優占種遺伝子情報の整備
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23510021
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
辻 彰洋 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (40356267)
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Keywords | バーコーディング / メタゲノム解析 / プランクトン / モニタリング |
Research Abstract |
シアノバクテリア・緑藻・珪藻の95株を分離し、海外共同研究者の緑藻株も合わせて約130株について、16S rDNA, 18S rDNA, 26S rDNA (partial), rbcL等について、遺伝子解析を行った。 今回、二層培地を工夫し、さらにKimura & Tomaru (2013)の方法も含めて、培養方法を工夫することにより、従来、培養が困難であった多くの種を培養することが出来た。特に環境指標上、重要でかつ従来培養が困難であった清水性種の多くについて培養に成功し、遺伝子解析を行うことが出来た。 また、抗体染色用のスライドグラスを用いて、単細胞から遺伝子増殖を行うSC-PCRを、培養がうまくいかなかったActinocyclus normaniiやStephanodiscus akanensisなどについて行い、成功した。 これらの成果を用いて、次世代シークエンサー(Roche 454 junior)を用いて、珪藻のバーコーディングに有望と考えられるrbcL-3P領域を用い、国立環境研究所が定期調査をしている霞ヶ浦のサンプル(2012年2月~2013年3月までの14ヶ月分)について、メタゲノム解析を行った。現在までに最初の5ヶ月分の結果が得られているが、10シークエンス以上のものを対象にすることや最大相対出現率が1%を超えるなどの条件を与えた結果、17OTUが重要種として得られた。このうち、7種がgene bankに登録があったが、残りの10種は登録がなかった。今年までの本研究の成果と合わせた結果、10種のうち9種について、候補が見つかった。現在もこの解析を継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・培養株の確立については、様々な手法を組み合わせることで、従来培養が困難であった多くの種について培養が可能になった。 ・培養が困難な種についても、珪藻の単細胞からのSC-PCR法と、WGA法を組み合わせることで、多くの種の遺伝子情報を得ることが可能になった。 ・次世代シークエンサーによるメタゲノム解析を行い、環境モニタリングに、遺伝子バーコーディングが適用できる可能性を明らかにすることが出来た。 ・メタゲノム解析を行う上で、登録されている遺伝子情報が圧倒的に不足していることが、改めて明確になり、本研究の成果の意義が高まった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるため、14ヶ月分のメタゲノム解析を終わらせ、環境モニタリングへの適用の展望と課題についてまとめ、論文化することを目標とする。 そのために、現在、所属が分からない遺伝子(OTU)について、候補種を分離培養あるいはSC-PCRを行い、データ解析の精度を高めたい。特にNitzschia属について、当初、想定していた以上のOTUが得られており、これらについて、実態を明らかにすることが、説得力のあるデータとする上で、重要と考えている。 また、実際のサンプルの顕微鏡下での計数を、メタゲノム解析の結果を踏まえて、再解析し、計数法とメタゲノム解析の結果を、共に解析できるようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の2/3は、昨年度同様、遺伝子解析関連の試薬(消耗品費)や人件費(謝金)に当てる予定である。 SC-PCRについては、そのプロセスが不安定であるため、その改良のために、小形の恒温器など(消耗品相当予定)が使えるかどうかについて検討したい。
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