2014 Fiscal Year Annual Research Report
沖縄島の日本脳炎ウイルスの変遷ーウイルス侵入リスクと健康影響評価への試み
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23510030
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
斉藤 美加 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90235078)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 沖縄 / 新興再興感染症 / リスク評価 / 日本脳炎ウイルス / 系統樹 / 進化 / 病原性 / 抗原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
島嶼という地理的特性を持った沖縄島の日本脳炎ウイルス(JEV)の変遷を、国内外の株を含めた遺伝子解析により描くことにより、JEVの島への侵入ル-ト、侵入頻度を類推する。また、JEVの変遷から島嶼における生物学的遺伝的多様性と系統淘汰に関して考察する。これらを通じて、沖縄島日本脳炎のリスクを多角的に評価する試みを行なう。 沖縄JEV株には時系列に古くからCluster I(1971-78)、 II(1985-92)、III(1998-2008)がありCluster IIはさらにIIA、IIB、IICのサブクラスターに分けられることを報告した。昨年度より、各系統の病原性を、マウス神経毒性、及び神経侵襲性毒性を指標として比較検討を行い、今年度継続した。神経毒性はCluster IIAが2株とも、その他の系統のJEVに比し高い傾向にあった。神経侵襲性毒性は遺伝子型1型(G1)に属するCluster IIIが2株とも、その他の系統に比し明らかに低かった。遺伝的系統に共通する生物学的特徴、病原性が示唆された。 各系統の進化の選択圧を示す非同義置換率・同義置換率を求めたところ、Cluster IIIがCluster I、IIより高く、負の選択圧が弱い(適応度が高い)ことが明らかになった。近年の環境変化によるJEV活動の低下と適応進化が関連する可能性があり、興味深い。 また、2012年分離株はCluster III と異なる系統に属するG1であったことが新たに確認された。この外来性JEVの沖縄島での出現が、近年の沖縄での疫学的変化、即ち患者発生、豚の死流産発生に関与する可能性があるため、今後注意が特に必要であり、監視の継続が求められる。 変遷を概観することによるアプローチが、JEV侵入リスク、日本脳炎発生リスクの評価に有用であることを示した。
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Research Products
(7 results)