2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510031
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 貴丸 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (50454624)
真野 浩行 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (40462494)
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Keywords | 淡水生態系 / 農薬 / 影響評価 / 魚類 / プランクトン / 微生物 |
Research Abstract |
<基礎データの蓄積(魚類)>前年度から引き続き,種レベルの毒性試験を実施した.魚類については生後3か月以内のモツゴの稚魚を用いて,シメトリン(除草剤),およびイプロベンフォス(殺菌剤)に対する急性毒性試験を行った.シメトリン曝露区では96時間後の生存率は15 ppmで33%,それ以上の濃度区では100%だった.イプロベンフォス曝露区では15 ppmで0%,10 ppmで88.9%,その他の濃度区は100%だった.これらの結果から,モツゴ稚魚に対するシメトリン,イプロベンフォスのLC50は<10 ppmであり,成魚や未成魚より比較的に感受性が高い稚魚へも両農薬は強い影響を及ぼさないことが分かった(農水省基準,魚毒性Aに分類). <基礎データの蓄積(動物プランクトン)>前年度に霞ケ浦の複数の地点から得られたカブトミジンコ系統を用いて急性毒性試験を実施した.実験結果を元に化学物質耐性が生息地域間で遺伝的な変異を示すかどうかを検討し,SETAC Asia Pacific 2012で発表した.また,前年度に行った慢性毒性試験の結果を整理し,対象とした殺虫剤の毒性を検討した.さらに,湖沼の生物群集の変動要因の解明を行うために,国立環境研究所のデータベースより霞ケ浦の生物群集および水質データを収集し,解析方法の検討を行った. <群集レベル評価>300 Lタンク内に構築したモデル淡水生態系を構築し,メソコスム実験を行った.各種農薬をデータベースから算出したHC5もしくはPNECの濃度で投与し,影響評価を行った.各生物の現存量や体成長への影響を評価するのみではなく,炭素・窒素安定同位体解析により,食物網構造に及ぼす影響の評価を行った.その結果,低濃度(HC5やPNEC)の農薬投与でも淡水生態系構造に強い影響を及ぼすことが明らかになった.引き続き,実験サンプルの分析とデータ解析を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎データの蓄積に関し,藻類と微生物群集を用いた毒性試験を現在行っている.当初,この試験はH24年度中に完了する予定だったが,実施が遅れている. 低濃度の農薬による生物間相互作用の撹乱についての研究もやや遅れている. 群集レベルでの評価については予定通り実施した. これらをふまえ,最終年度であるH25年度には不足している実験データを充実させ,それらを元に総合的な評価を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
<基礎データの蓄積>モツゴ稚魚を用いて,フェニトロチオン(殺虫剤)に対する急性毒性試験を行う.その結果およびシメトリン(除草剤)とイプロベンフォス(殺菌剤)の結果を,他魚種の報告結果と比較し,モツゴ稚魚の感受性を総合的に評価する.また,低濃度の農薬であってもその影響で遊泳速度や遊泳パターンが変わるワムシ類やミジンコ類が存在する.ほとんどの魚種の稚魚は,主にワムシ類やミジンコ類を餌にしているため,彼らの遊泳速度や遊泳パターンの変化で稚魚の餌選択性が変化する可能性がある.そこで,低濃度の農薬の影響によって,稚魚の餌選択性に変化が出るのかを実験的に解析する.モツゴは日本の多くの湖沼で一般的にみられる魚種であるため,本研究結果により,低濃度の農薬が湖沼生態系に与える影響を予測できるだろう. 藻類や他の微生物についても,各種農薬を用いた生態毒性試験を行い,基礎データを得る.藻類についてはOECDのテストガイドラインに準拠して行う.他の微生物については,野外から採集した微生物群集に対する短期的な曝露による影響評価を行う. また,複数のミジンコ種を用いて,繁殖阻害試験を実施し,各種農薬の慢性毒性を調査する. <群集レベル>H24年度に行ったメソコスム実験で得られたサンプルの分析,データの解析を進め,農薬の影響を生態系レベルで評価する.さらに,霞ケ浦の観測データを用いた時系列解析を行い,生物群集の変動要因の解明を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は本事業の最終年度になる.得られた結果を国際誌に投稿するため,英文校正にかかる費用が必要になる. 本事業の大半は実験に基づく検証であるため,前年度と同様にガラス器具,薬品類などの消耗品を購入する. また,栄養塩分析,炭素濃度分析,安定同位体比分析などの機器分析に必要な消耗品を購入する. 得られた結果を学会等で発表するための旅費として支出する.
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