2011 Fiscal Year Research-status Report
黄砂による日常症状に見られる健康被害に関する広域調査研究
Project/Area Number |
23510033
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 黄砂 / 健康被害 / インターネット / 健康調査 |
Research Abstract |
平成23年度計画として、以下の6項目を予定していた。1)我々がすでに確立している「インターネットを介した健康調査システム」を改良する、2)アレルギー症状に関する調査項目を検討し追加する、3)モニターの募集を日本生協連と協働して行う(関東と関西で合計2000名を目標とする)、4)毎日の健康調査をインターネットを介して実施しデータの収集を行う、5)黄砂測定量や花粉飛散量、その他の環境因子のデータを収集し健康調査データとリンクさせて分析する、6)モニターからの意見をアンケート調査し今後のシステム改良に役立てる。1)~4)および6)は予定通りに実行することができている。既存の健康調査システムをベースに、調査項目や入力画面の改良を行うことで、より簡便で誤入力を防ぐことができるシステムにすることができた。モニター募集も日本生協連の協力のもとに、東京と兵庫県でそれぞれ1000名登録することができており、平成24年1月から毎日の健康調査も開始することができた。5)に関しては、現在黄砂測定量や花粉飛散量の公表データを収集しており、すべてのデータが集まり次第、本研究で収集した健康調査データとリンクさせ分析する予定である。よって、本年度予定していた研究内容に近い実績を収めることができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度計画として、我々がすでに確立している「インターネットを介した健康調査システム」を改良し、アレルギー症状に関する調査項目を追加し(調査項目:微熱、高熱、鼻水、咳、下痢、嘔吐、胃痛または腹の痛み、けいれん、目のかゆみ、発疹、関節痛、頭痛、のどの痛み、くしゃみ、皮膚のかゆみ、手あれ、不眠)、黄砂による健康被害に関する広域調査を行うためのシステムの準備を整えた。そのうえで、日本生協連の協力のもとに日本生協連組合員を対象に、関東(東京)と関西(兵庫)でそれぞれ1000名(合計2000名)のモニターを登録することができた。予定登録モニター数が合計2000名であったため目標を達成することができており、関西と関東の地域差も考慮した分析が可能となったと考えられる。毎日の健康調査によるデータ収集は、平成23年12月から募集を開始したモニターを対象に、黄砂の飛来量が多い平成24年1月から調査を実施した。登録モニターからインターネットを介して毎日の健康状態を収集し、自動集計後に専用サーバーで保管している。収集されたデータのクリーニングを行い、その後それぞれのアレルギー症状の日々の変化を有症状率で経時的に分析したのち、国立環境研究所が、24時間体制で毎日測定しているライダーデータとリンクさせて分析を行う予定である。黄砂測定量を含めて、花粉飛散量や他の環境因子を現在収取しており、それらが完了した時点で、本調査で収集したデータとリンクさせて分析を行う予定である。また、「インターネットを介した健康調査システム」をさらに改良していくために、モニターから意見収取を行うためのアンケート項目も作成し、調査システムに組み込んだ。以上のことから、現在までの達成度としては当初予定していた計画がおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度調査で得られた毎日の健康調査結果と黄砂測定量をリンクさせたデータセットを作成し、多変量解析を行う予定である。この際、調査を実施した症状に関する項目(アレルギー症状や下痢、嘔吐等)を従属変数とし、個人的要因の影響を減らすために性別・年齢や居住地域等を独立変数として調整したうえで、黄砂量の影響を分析する。初年度で得られたデータとその分析結果から、平成24年度に調査を行う症状(調査項目)の再検討を行う。平成23年度で興味深い結果が得られた項目は、平成24年度にも調査項目に含め、アーチファクトでないことを確認すると同時に、関連する質問項目も追加し、詳細な分析ができるようにする。平成24年度の調査システムは、前年度のシステムを基盤として、前年度の分析結果をもとに修正した調査項目などを反映する形で、モニターからの意見等も考慮し修正を行う。前年度と同様に、関東および関西で調査を行い、当該年度も、それぞれ2000名の登録モニター数を確保するようにして、調査規模を維持することを目標とする。これらに合わせて、消防庁が公表している院外心肺停止患者データベースに黄砂測定量をかけ合わせ分析し、院外心肺停止症例のアウトカム(生存率・脳機能分類)における黄砂の影響を分析することを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は前年度に得られた健康調査結果のデータクリーニングを行う必要がある。本研究で使用している調査システムは、モニター各自の入力によるものであり、毎日回答を収集しているため、誤入力などが含まれる。精度の高いデータ分析のためには、データクリーニングが必須であり、この作業を行うための研究補助員の人件費が必要となる。さらに、データクリーニング後のデータベースに、黄砂測定量等の外部データをリンクさせる作業を行うが、この際にも公的機関からデータをダウンロード後にリンクさせるための煩雑な作業が必要となる。 調査システムをより良いものにするために、前年度調査が終了した時点でモニターからの意見をアンケートしているが、その集計・解析作業を行う予定である。これにより、当該年度のシステム改修を行っていく予定である。前年度と同じく、当該年度も関東および関西で同様の健康調査を繰り返して行うことで研究精度を高める必要があり、それにかかる費用(日本生協連および関連地域生協への作業依頼、システム改修費やサーバーレンタル費等)や研究成果を発表するための学会出張に関する費用等が必要である。
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Research Products
(1 results)