2011 Fiscal Year Research-status Report
線虫を用いた含フッ素含有医薬品(フルオロキノロン)の生態影響評価
Project/Area Number |
23510035
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
一川 暢宏 立命館大学, 薬学部, 教授 (10380932)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | フルオロキノロン系抗菌剤 / レボフロキサシン / 線虫 / 生態影響調査 / トキシコジェノミクス / 有機フッ素化合物 |
Research Abstract |
有機フッ素化合物 (perfluorochemicals: PFCs) は、界面活性剤、コーティング剤など工業的に広く利用されているが、生体内においては難分解性や高い蓄積性を示すことから、新たな環境汚染物質として注目されている。医薬品の中にもフッ素を含有するものがあり、代表例にフルオロキノロン系抗菌剤 (Fluoroquinolones:FQs) がある。我々はこれまで、PFCsの神経内分泌系への影響等、生態環境に及ぼす影響について調査してきた。また近年、河川水中の医薬品検出に関する報告例が相次いでいるが、我々も韓国のMankyung River流域の医薬品汚染実態の調査を行ったところ、検出された医薬品類の中にFQsの1つであるLevofloxacin (LVFX)が含まれていた。医薬品による水系汚染は、ヒトへの健康影響や、薬剤耐性菌の発生などの問題を引き起こす可能性もある。本研究ではFQs主にLVFXを使用し、モデル動物として線虫を用いたトキシコジェノミクスによる生態影響調査を行うこととした。今年度は、化学物質の生体影響調査系として確立してきた毒性学的手法の医薬品への適用について検討をすすめた。その結果、致死影響試験、成長・成熟・繁殖影響試験については、ほぼ従来の手法を用いることが可能であった。致死影響試験については設定した全てのLVFX濃度とも影響は認められていない。しかし、他のFQsでは、動物実験で奇形発症の可能性が示されているため、繁殖影響試験などで、詳細に検討したい。加えて、老化試験、多世代影響試験の手法についても検討を進めている。また、次年度以降に予定している線虫DNAマイクロアレイ実験のために、線虫からのRNA抽出、精製法等についての検討を行い、本研究費で購入した「ライフサイエンス分光光度計」を活用し、RNAの純度チェック等も簡便に行えるようになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に行う予定の従来の毒性学的手法を用いた線虫バイオアッセイ系によるレボフロキサシンの評価は、まだ中途であり、研究計画全体としての進展度は約20%程度と思われる。ただ、次年度以降に行うDNAマイクロアレイ実験等の準備もすでに始めており、今後は計画に沿った研究達成が可能であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
LVFXの線虫バイオアッセイ系での薬剤暴露の影響評価を継続する。DNAマイクロアレイ法(研究分担者担当)及びリアルタイムPCR法(研究代表者担当)により遺伝子発現変動解析を行う。LVFXに曝露した線虫より抽出したmRNAを用いて合成し、蛍光標識したcDNAを、線虫C.elegansの異物代謝、薬物代謝、脂質代謝、ステロイド代謝等に関わる遺伝子群を中心にスポットした自作カスタムDNAマイクロアレイを用いて解析し、遺伝子群の発現プロファイルを試みる。次に、線虫全遺伝子を搭載した市販のマイクロアレイチップを用いて、代謝系以外の遺伝子群について発現変動を網羅的に解析する。また、マイクロアレイ解析よりLVFXに特異的に発現変動を示す遺伝子については定量的リアルタイムPCRにより遺伝子発現解析を行う。加えて、トランスジェニック線虫及び線虫変異体を用いた評価を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初設備備品費として申請した、RNA純度解析用極微量分光光度計(ナノドロップ)の同等国産品がより安価で入手できたため、その予算残余分をDNAマイクロアレイチップ等の経費に充てたい。その他の研究費については申請時と変更はなく、試薬、薬品、ガラス器具、プラスチック器具等に充当予定である。また、次年度以降は特に分担研究者との連携が重要となるため、打ち合わせ等の経費充当の増額も予定している。
|