2011 Fiscal Year Research-status Report
浮遊アオサによる極端な優占現象(グリーンタイド)が干潟の生態系機能へ及ぼす影響
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23510038
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
矢部 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (50300851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 雅紀 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (00311324)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | グリーンタイド / ミナミアオサ / 谷津干潟 / 遺伝子解析 / 侵入種 / 航空写真 |
Research Abstract |
調査対象地は,侵入種ミナミアオサを含むグリーンタイドが発生しており,かつ物質収支を捉えやすい形状である東京湾奥に位置する谷津干潟とした。侵入種ミナミアオサおよび在来種アナアオサのフェノロジーに応じて,年4回ほどアオサ類のバイオマス調査を実施した。調査には事前調査で適切とした,50cm四方の方形枠を用い,繰り返し数を12として実施した。サンプルは干潮時に現地で刈り取り,各枠1箇所重なりの層数を求めた。別途48個体は遺伝子解析による種同定用として採取した。その結果,湿重量としては春期に700gFWm-2程度を示し,夏期には10gFWm-2以下にまで激減した。その後,冬期には1000gFWm-2を超え回復を示した。層数は春期に平均2-3層程度,その後夏期に激減し平均1層未満,冬期に回復し平均6-7層程度まで回復していた。種の判別については,予備試験においてほぼ全てがミナミアオサであることが予見されたため,費用対効果の観点からDNA抽出までを実施するにとどめた。水や底質の窒素,リン,炭素および硫化物濃度を計測するために,海水,底泥,アオサ類を含む底生生物を採取し,前処理をして冷凍保管した。 現地調査と同時期に撮影された航空写真を用いて,本対象地におけるグリーンタイド発生面積の季節変化を見積もることを目的として,23年度は春期と夏期に谷津干潟の干潮時に撮影された可視航空写真を購入し,それに加えて同時に撮影された近赤外フォルスカラー航空写真を取得することができた。それらの情報から,干潟の冠水の影響を受けずに正規化植生指標(NDVI;Normalized Difference Vegetation Index)を算出することができた。NDVI値は植物のフェノロジーをよく示す指標として知られており,グリーンタイドの面的経時変化の評価を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は,大震災以降に千葉県において多発した地震の影響で,調査地でも地盤沈下や地割れが進行し,管理者による立ち入りの制限が行われた。そのため調査についても手続きが煩雑化,立ち入りに関しても慎重を求められ,実施内容の集約化が余儀なくされた。 空撮会社の機体整備期間が長く,干潮時の写真であっても雲の状況などが悪かったということで購入可能写真が限定された。 種同定については費用対効果の問題に加えて,分担者が放射線関連等の緊急課題への参加を余儀なくされ,当該課題にエフォートを割かれた。
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Strategy for Future Research Activity |
アオサ類の種同定については従来,PCR法によりITS領域を増幅しダイレクトシークエンスによって塩基配列を決定し行われてきたが,シークエンスには時間とコストがかかり,本研究のような多量のサンプルを対象とする場合には,実用的な遺伝マーカーの開発が必要であることが明らかとなった。すでに数種のアオサ類に関しては従来法と新法の比較を実施しており,調整済のサンプルについても迅速な種同定を実施できると考えている。 グリーンタイド発生面積の季節変化を見積もる試みとして,24年度は秋期から冬期にかけての回復期の可視航空写真と近赤外航空写真を取得し,正規化植生指標(NDVI;Normalized Difference Vegetation Index)を算出,アオサ類のフェノロジーとグリーンタイドの面的経時変化の把握を進める。 採取・保管された海水,底泥等サンプルに含まれる窒素,リンおよび硫化物の濃度測定やアオサ類を含む底生生物の種同定と個体密度計測を計測する。 アオサ類各種の増殖速度および栄養塩等除去速度の特性を明らかにするための室内実験の立ち上げを行う。 全般に関わる研究補助者を謝金で手当てし,計画全体の遅れを修正する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フェノロジー解析に有効なデジタルカメラ近赤外航空写真購入費についてはアオサ類が回復する秋期から冬期にかけて1期38万円を充当する。水・底質分析用試薬および遺伝子解析用試薬については合計25万円を想定する。研究補助者謝金については120万円を計上し,予定した実験用水槽は所内の物品を借用し,予定していた植物育成用装置に利用する光源や流動発生装置に45万円,運搬費6万円で合計234万円とする。
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Research Products
(3 results)