2012 Fiscal Year Research-status Report
浮遊アオサによる極端な優占現象(グリーンタイド)が干潟の生態系機能へ及ぼす影響
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23510038
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
矢部 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (50300851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 雅紀 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (00311324)
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Keywords | グリーンタイド / ミナミアオサ / 谷津干潟 / 遺伝子解析 / 侵入種 / 航空写真 |
Research Abstract |
昨年度調査によって谷津干潟で出現が確認された3種のグリーンタイド形成アオサ(アナアオサ、ミナミアオサ、リボンアオサ)の簡便かつ低コストな種判別手法の開発に成功した。これにより、従来法では不可能であった統計的に有意なサンプリングが可能となり、谷津干潟におけるグリーンタイドの主要な形成種は侵入種ミナミアオサであることが判明した。種別の生物量の季節変化を明らかにした。 表層水中の栄養塩類を測定した結果、一年を通じて全窒素(TN)と全りん(TP)ともに下げ潮の方が上げ潮よりも低濃度であることが明らかとなり、干潟で吸収されていることが明らかになった。一方、底質直下深度5cmの間隙水中の溶存態全窒素(DTN)と溶存態全りん(DTP)は、盛夏から初秋にかけて1桁オーダーで上昇した後に減少した。また底質直下0-5cm層の酸揮発性硫化物(AVS)は春から初夏にかけて上昇する傾向が見られた。したがって、底質環境においてはアオサ類の衰退(バイオマス減少)にともなう還元化および間隙水中の栄養塩類濃度の上昇と、その後のアオサ類の再生(バイオマス回復)にともなう間隙水中の栄養塩類濃度の低下という、アオサ類のフェノロジー(生物季節性)にあわせた変化が生じていることが明らかとなった。一方で、これら底質表層での変化は干潟の直上海水中における栄養塩類濃度の変動には大きく影響しない可能性が示唆された。 アオサ類の増殖特性を明らかとするために培養実験を試みた結果、自然海水だけではなく人工海水ベースの培地も使用できることが確認された。また、ディスク加工した藻体小片と自然断片化した藻体小片ともに培養中に繁殖誘導されることが確認された。したがって、藻体片を用いて栄養塩吸収特性を把握する培養実験を実施するためには前培養条件など十分な対策の検討が必要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度課題となった簡易で低コストなアオサ類3種の判別方法も確立し、課題としていた底質・水質の分析も順調に進行している。航空写真については教師付解析とNDVI処理化が進み、アオサ類のバイオマス変化との関連を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
底質中の底生生物の種数や生物量の調査を進め、侵入種ミナミアオサの優占が干潟の生態系機能のうち生息場供給機能に対する影響を検討する。航空写真の教師付解析とNDVI化を継続し、グリーンタイド発生面積の季節変化を評価する。室内培養がうまくいかないため、野外実験によりアオサ類の生産速度および栄養塩吸収速度の特性を明らかにし物質収支への寄与を推定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
航空写真の教師付解析とNDVI化に必要な近赤外線航空写真購入に1期40万円を充当し、水・底質分析用試薬および遺伝子解析用試薬については合計32万円を想定する。研究補助者謝金については30万円を計上し、運搬費6万円を含めて、102万円とする。
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Research Products
(4 results)